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世界が滅ぶ前に平和を願って何が悪い?  作者: 如月 弥生
第一章 建国編
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第十話

また予約投稿出来てませんでしたァ! すいませぇん!

 澪が連絡をしてから急ピッチで作業を進めた。

壁を様々な方面で改良し、外敵には強く、移動にも問題なく、迎撃も可能という感じにしたり、ベースの機能をさらに増やし、監視室のようなものも造った。これで、防壁に囲まれ、孤立した空間から要塞へと進化した。

みんなで、休憩していると、門に誰かが来たことを知らせる防犯装置が鳴り響く。来たか。


「俺と澪で迎えに行ってくる」


「あ、海翔が行くのか。了解。一応堕者(ロスト)かもしれないから気を付けてな」


「おう」


 澪をおんぶした海翔は勢いよく駆け出し、瞬く間に門に到着。能力の無駄遣いだ。

そして、ゆっくり門を開けると……


「おっ、出てきた。ここで合ってる? リレイスってとこ」


「そう。ようこそ。リレイスへ。まずはベースへ案内する」


「りょ~。今は真白さん一人?」


「あ~、俺もいるんすけど……。はじめまし……!?」


「あ、どうもはじめままままま!?」


「? 二人ともどうしたの?」


「……まずはベースに行こう。そこで話そーぜ」


「そ、そうだな」


「私だけ話についていけない……」


 顔を合わせた瞬間に驚く海翔と澪の部下。澪は顔見知りの線を疑うが、部下は高校に行っていないと言っていた。友達ではないだろう。そう思い、まずはベースに連れていくことになった。



…………



プシューッ


「おっ、海翔たち帰ってきたか。例の澪の部下と一緒に」


「例の澪のって言いたかっただけだよね?」


「……はい、すんません」


 どんな奴なんだろうな。まさか強面のやつは来ないと思うが……

澪の口ぶりからして、大体同級生位のはずだが……

そう考えていると、混乱しているような海翔が来た。


「連れてきたぞ。……想定外の人物だったがな」


「? 想定外の人物? どういうことだ?」


「こういうことだ。おい。いいぞ」


ウィン……


「おう! 久しぶり! みんな!」


「「「「……はあああああああっっっ!!??」」」」


 そこには、確かに想定外の()()()がいた。


小坂田(こさかだ) 亮太(りょうた) みんなのムードメーカー(?) いつも元気に話している。人にパシられることを使命としていた。なぜだろう。


「……もしかして、皆知り合い?」


「中学時代のクラスメイト! いつものグループの一人!」


「……数奇な運命。なら、なぜ亮太はうちの研究所へ? 高校に行っていないと言っていた。みんなと同じ高校に行けばよかった」


「えーっと? なんでだっけな……確か……」


「「「「「「ゴクッ」」」」」」


「忘れたわ」


「ぶっ飛ばすぞテメエ」


 思わず悪態をつく悠。ついうっかりディヴァルに手をかける。

当の本人はへらへら笑っており、笑顔でキレた悠も本格的にディヴァルを抜いた。


「おい~!? やめろ、悠! 暴走すんな!」


「ふっ、バーサーカーモードとは、まさにこのことじゃん!? 逆に暴れてほしいかも!」


「こやっちも煽るんじゃねえ!」


 一応冗談なのでディヴァルをしまい、話を聞く体制に移る。


 今、亮太は色々な国でを旅する旅商人をしているようだ。

金とか使えるの? と思っていたが、どうやら世界共有貨幣……『ケルド』と名付けたそうだが、それを使っているらしい。

で、ケルドは全て価値の指標。どの国の国民も、黒色に金色の線の混じったカードを使い、それで決済するらしい。硬貨、紙幣なんてものは存在しない。全て情報上の存在。一種の仮想通貨だ。

つまり、ケルドは概念である。


 ……え、金、無い。なんだよケルドって。いつの間に作りやがったんだ。


 最初は、いくつかの国……違うな。新国家が組んで作った組織、世界解放連合政府、通称WRUG(ラグ)が共有の貨幣として作ったらしいのだが、貿易、材料費、価値の問題により、全世界で統合されたとのこと。

なるほど。EUのユーロみたいなもんが世界に広まったってことか。

あっ、てことは、国として機能させるためにはそのケルドとやらを稼がなきゃならないのか?


……めんどっ。


「んで、俺はどうすればいいんだ? 呼ばれたけど、実際に何をすれば?」


「……亮太は今旅商人をしていると言った。食料を持っていると言った。だから、少し分けてほしい」


「食料を? ああ、食料不足になってるってことか~。最近はそんな国も無くなってきたと思ったけど、やっぱ新興の国はそれに陥るんだな~」


「新興で悪かったな。それで? 食料分けてくれんの?」


「そりゃあ、みんなのお願いだったら分けるわ。あと、リレイスの手伝いがしたいわ。俺だけ仲間外れとか嫌だし」


「いいのか? お前は旅商人を楽しんでるんじゃ……」


「いいんだよ。もとはと言えば、俺の超素能力がそういうのに向いてたから始めただけだし。あと、そろそろ独りが寂しくて!」


「そうか……そうだな。じゃあ、お前を正式なリレイスのメンバーの一人として迎えよう。みんな、異論はあるか?」


『ないでーす』


 五人から一斉に返事が返って来る。元から俺たちの大事な友達だ。特に反発する理由もないだろう。

そして、気になったことが……


「お前も遺伝子確立してたのか」


「あの研究所のメンバーで三番目くらいにした。ん? も、ということは……」


「ああ、俺達全員苦しんだ。一瞬三途の川が見えた」


「フッ、私は片足突っ込んだけどね!」


「死んでね?」


 一人もうちょっとで黄泉の国に行きそうなやついるんですけど。生き延びるための手段で死にかけるってなんだよ。

まあ、それはいいとして。


「亮太の超素能力ってなんだ? 大量の荷物を持っている、という割にはあんまり持ってないしな」


「ん、そういえば私も知らない。教えて」


「えー、俺の超素能力? 口頭で説明するより、あの機械使おうぜ~」


「じゃあ、医務室に行こう」


「は? 医務室?」


「精密検査で超素能力も読み取る機械、アルケイドを使う」


「へぇ~、真白さん、色々なもの作るなぁ……」


 うっ、こいつが真白さんって言うたびに聞きたい衝動が襲う! あのリビングでのみんなの微妙な顔を見たか! えっ、名字じゃね? みたいな顔を! けど、名字は捨てたって言ってた彼女に聞くわけにもいかない!

そんなふうに葛藤していると、いつの間にか医務室のアルケイドの前に。亮太はあっさり乗ると、アルケイドはピピピ、という音を鳴らしながら亮太をスキャンする。

結果はこうだ。



【超素能力】

ポーター:どれほどの重量でも持ち上げる。

危険物注意:どれほど危険な物でも安全に持ち運びできる。

レスタリア:無限の体力を得る。

ディメンション:無限に収納できる次元倉庫を造り出す。



「……なあ、亮太」


「……どした?」


「お前、パシリに最適なスキル持ってるんだなぁ……」


「そんな憐れんだ目で見るなよぉ! ちょっと悲しくなったろ!」


「ん、モチーフはパシr……荷物持ちと言ったところ。ディメンションは、簡単に言えば四次元ポケッ……ん゛ん。無限に荷物が持てるパシリ……」


「やめろぉ!」


 まあ、軽く煽ったところでみんなの紹介。


俺のモチーフは分からないが強い能力。「は? きっしょ」

沙紀の破壊神。「……えっぐ」

澪の預言者。「さすがっすパイセン」

海翔の韋駄天。「あ、やっぱ走る系なんだ」

小柳の医者。「えっ、想像つかな―――」ドゴッ「ぐえっ」

稲盛の毒使い。「頭が毒に侵されてるからってww」


 ……よく考えたら意外と尖ったメンバーだな。防御系が誰もいないし、属性系の超素能力を持つやつもいない。

え、めっちゃ尖ってんじゃん。なにこのいかつい国。


「まっ、ひとまず食料問題は解決した……つっても、先延ばしにしただけだけどな。これから本格的に国として機能するようにする。そのために……」


「ん、私が瘴気を払う機能と、植物の育成を促進させる機械を作る。食物の方はまだ結構かかりそう。ごめんなさい」


「いや、作ろうとするだけで凄いからね!? 私達そんな頭持ってないんだし! 澪ちゃんだけの才能だけだよ!」


「沙紀……ありがと」


「お~い。二人でイチャイチャすんな? っと、あとは金……ケルドを稼ぐことだな。いや、稼ぐって言ってもカードがないからな……稼ぐも何も無いのか」


「今あるのって俺のこのカードだけなんだろ? まずはカードを作らないとな。素材はエレクテレスを基本とした五種類の素材を集めればいいんだけど……うん。なぜか全部集まってるから作れるな」


「メレルトレトにぶち込めば、澪が何とかしてくれるだろ。というわけで、澪、よろしく」


「んっ、任された」


 ふんすっ! という感じで頷くと、素材を持って行った。数分後、めちゃくちゃ綺麗なカードが渡された。

全体的に黒だが、下方に金色の模様がある。シンプルだが、この中に数多の情報機器が仕込まれているのか……そう思っていたのだが、違った。


「この中にはそれぞれ形が微妙に、本当に微妙に違うエレクテレスが入ってる。だから、本人以外が使えないようになってるし、破壊も不可能」


「あっ、これ自体に情報機器は入ってないのか。これを読み取って、その人の保有するケールドを認識するんだな。おもしろい仕組みだな」


「真白さん……なんで見ただけでそこまで完璧に作れるんですか……。各国の研究者が泣きますよ」


「泣いてしまえ」


「おい」


 え、澪って思ってたよりも天才? なんでも作るし、何でもコピーするし。

いや、天才なのは分かってたけど、やべえ位の天才だった。


「あ~、あれよな? みんな、今カード作ったばっかだから、残金ゼロよな?」


「「「「「「そりゃもちろん」」」」」」


「じゃあ、少し俺のを分けるわ。幸いというか、ケルド結構有り余ってるし」


「お前神かよ! まじ神かよ!」


「ふっ、俺を崇めろ!」


「やだ」


「おいこら悠」




 ……その後、亮太の持っていた端末で、亮太のカードに登録されていたケルドの残金を一部分け与えてもらった。

亮太が最初に持っていたのは、百二十万ケルド。六人に十万ケルドづつ分け、ひとまず金には困らない状況にした。


……これからは、国として認められるために、国を相手しなければならない。まずは、貿易だな。

つっても、欲しいものって言ったら……第一優先は食料だが、他にもそろえなければならないものも多い。

エレクテレスなんか、この世界の基本素材だしな。

ああ、あと、一番欲しいもんがあるわ。


「国民……いないじゃん」


「あっ、国って言う割には国民いないじゃん! どうするの? 悠!」

「先に食料だと思ってたけど、国民がいないと国じゃないしな。むしろ先じゃね?」

「まあ、食料問題でごたごたしてたけどさ……白崎、もうちょっと頑張ろうぜ?」

「おい~、悠~。しっかりしろや~」

「……ん、協力者は多い方がいい」


「何この一斉非難」


 俺泣いちゃうよ? 泣いちゃうからな?

特に、小柳から「もうちょっと頑張ろうぜ?」って言われたのがきついんすけど。

なんだよ。国民がいても食わしてやれなかったら意味ねえだろうが。

少し拗ねたが、そんな暇はない。他の国と貿易を始めなければならないからだ。

この、まだまだ何もないこの国で食料を得るにはケルドか、それに見合う価値を示さなければならない。

この国で価値あるもの……?

よし、これは会議だな。

というわけで……


「この国が他の国に示せる価値を考えてほしい」


沙紀「この国の価値……? 建国して数日だよ……?」

海翔「価値? ねーな!」 悠「おい」

小柳「いや~、私も分かんね!」 悠「おい」

稲盛「無いんじゃね?」 悠「……」ドンッ 稲盛「ぐえっ」

亮太「あー、俺も分からねえ。まあ、いろんな国を旅をして、必要な物といったら、食料ぐらいだしなぁ……」 悠「だよな……」

澪「……今の国家が常に欲するものと言えば……お金か、エレクテレス?」


……ん?


「「「「「「それだ!!!」」」」」」


 そうだ……どの国でも、メステリウス及び武器(ファルス)作成のためにエレクテレスが必要なはずだ。

だったら、俺たちが堕者(ロスト)を狩りまくって集めたエレクテレスを交渉材料として使うか……

……今はそれしかないよな。


「分かった。ひとまず、何人かで狩りに出よう。大量のエレクテレスを使って、貿易の材料にする。って言っても、相手が俺達の足元を見てきたらちょっときついがな……まだ他の物を要求されるよりはマシなはずだ」


「了解。戦闘向きの俺と、悠と、紅月さんと、いなも……あー三人でいいか。名前を呼ばなかった四人は、リレイスで発展に努める……これでいいな?」


「ああ。そんな感じだな」


「おい待て? 今、俺を入れようとしてやめたよな? なんでだよ。おい海翔」


「俺と一緒にお留守番だー! 稲盛ィ! パシリ仲間が増えたぞー!」


「勝手に仲間にすんじゃねえよ。俺はポーションづくりに勤しむっての。で、居残り女子二人組はどうするんだ?」


「……私は、いろんな機械を作らなきゃいけないから。よろしく」


「あっ、私も澪の手伝いしなきゃだから、頑張れー」


「あるぇ? 特に仕事無いの俺だけ?」


「ふっ、亮太。お前はニートだ!」


 まあ、澪の手伝いっていう大事な仕事があるよな……

まあ、今いるメンバーとしてはこの振り分けが正しいだろうな。

稲盛のポーションがあれば、戦闘でも役立―――


あっ。


「そうだ……稲盛のポーション。これはうちだけの物じゃねーか!」


「あー確かに! 稲盛! お前が役立つときだ! ひゃっはー!」


「小柳。テンションは抑えろ。それで、稲盛。ポーションの大量生産、それと新種の開発できるか?」


「はぁ……やってやるよ! 見とけよ!」


「いや見ないけど」


「黙れ悠!」


 世界で唯一無二の代物。それが稲盛のポーションだ。ならば、それ相応の買取価格も付くだろう。

……他の国が同じようなものを開発していないことを祈るだけだ。



…………



 話し合いをしてからの俺たちの動きは速かった。

まずエレクテレス組だが、東京での狩りはやはり効率がやばい。何度か攻撃が喰らい、命の危機を感じたほどだ。

だから、隣の……埼玉での狩りを始めた。

想像以上に弱く、意外とスムーズに狩れた。

そして、大体五時間で集めたエレクテレス総量―――二百十五。


 堕者(ロスト)達を倒すと結晶が落ちて来る。そして、その結晶の形、密度は全て同じだ。つまり、堕者(ロスト)一体が落とした結晶こそ、一ととらえられる。

一部の強いやつらは二つほど落とすけどな。

それと、不思議なことがある。


 ……堕者(ロスト)達が、ケルドを()()()ということだ。

いや、落とすという表現は間違えているな。

死ぬ瞬間に光の粒子となって消える。その時の光に、ケルドも混ざっている、って感じか?

カードを持っているとそれに吸い込まれたから、間違いない。

吸い込まれ、カードが光を発した。帰ってから計測すると、一万ケルド程溜まっていた。

つまり、一体辺り五十ケルド落としてるな。

だが、不可解だ。


 ケルドは、情報上の存在のはず。なぜこいつらの光で増える?

こいつらの光が情報に干渉しているのか? 分かんねえ……

ちなみにこれを澪に報告すると、


「エレクテレスは堕者(ロスト)の一部……? いや、死んだら完全に別物になるはず。それに、別個体だっている……。違う。全て同一個体。DNAは皆等しい。ならば……」


 と呟いていた。


で、居残り組の成果は―――


「おっ、帰ってきたか~。お帰りー」


「お、か、えり……ガクッ」


「こっ、稲盛!? お前、どうした!?」


「あー、大量のポーション作って死んでる。どこかの小柳様がブラック並みに働かせたからな~」


「ああん? あんだってぇ? あ~んだってえ? なんか言ったかあぁぁぁ??」


「なんでもないっす! あいっ! すみませんッ! 仕事に戻りますッ!」


「よろしい」


「「「……」」」


 む、惨い。なんか、惨い。大人になる前に終末が始まってよかったかもしれない……

にしても、稲盛頑張ったんだな……こんなにボロボロ(精神的)になって……

三段階目(毒薬)の連発は結構キツイんだな……


「あっ、そういやさ、稲盛一回死んだよぉ? ぽっくりって」


「「「エッ……!?」」」


「私の〈リカバリー〉が無かったら、そのまま逝ってたね~」


「いや、小柳。『逝ってたね~』じゃないんだよ。えっ、死んだ? コイツが? ゴキブリ並みにしぶといこいつが?」


「おい」


「え~、稲盛逝っちゃったのか? ぽっくり? 何も考えてないお前が?」


「おい」


「稲盛くん、死んだんだ……。ご冥福、お祈り申し上げます」


「お前ら分かって言ってるよな!? 特に悠!」


 ふっ、二人はちゃんと分かったみたいだな。このノリに。

だが、ホントに死んだのか?


「ちゃんと死んだよ……死因」


「「「ごくっ」」」


「過労死」


「「「……は?」」」


「働きすぎで死亡。悲しいよな。ほんと」


「……そうか」


 なんて悲壮感漂う死に方だ……

過労死って……

終末世界での死因が過労死とかあるんだな……

よし、切り替えよう。うん。


「とりあえず、稲盛のポーションを他国に売りに行こう。まぁ、他国って言っても、旧日本国内、それも一番近くの『アーザレイル』からだな」


「あーざれいる? どこそこ」


 アーザレイル。旧静岡県にある小さな国だ。まあ、リレイスに比べたら圧倒的な国力の差があるが。

アーザレイルは基本的に水産業で発展してきた。

水質の汚染される世界で、美しい海を保つ機械、『キレイニナーレ一号』を開発したそう。名前は触れてやるな。

それにより、元から栄えていた静岡の漁業を支えている。

無論、魚たちは弱っているので何らかの加工をし、毒素を取り除いているらしいが。

ひとまず、食糧難に喘ぐ俺たちが真っ先に貿易をすべきはあそこだろう。金も稼ぐ。

そして、もう一つ。


「ちょうどいい。『ケカルセルト』とも貿易を始めよう。できれば、だが」


「すんません悠さんや。今は社会の勉強ですかい?」


「沙紀、それは違う」


「あっ、そうだよね」


「国の勉強だ」


 なぜか脛を蹴られてしまったが、気にせず話を進める。

ケカルセルト。旧岐阜県にある中くらいの国だ。

その国は特殊で、とても貿易に特化している。いわば、日本にある国々の心臓。

中継貿易、加工貿易を売りとしている。

その謎の運送技術により、他国から信頼を得て、ある程度大きな国になった。

この国と貿易をするということは、世界とつながる準備ができたということになるので、迂闊なことはできない。

しかし、こことの貿易で手に入る“信頼”が欲しい。


「というわけで、明日にでもアーザレイルに行ってみるか。あらゆる可能性を模索して、成功させる。だから、交渉組は俺、澪、かいt……亮太の三人で行く。いいな?」


「おい悠。今俺を入れようとしてやめたよな? なぜだ?」


「好奇心で変なことしてほしくないから」


「する自信があるからここは退こうじゃねえの」


「自信あるんだ……」


 良くも悪くも好奇心旺盛の海翔だ。見たことないものに触れて問題を起こすのはやめてほしいからな。


 その後俺たちは各々の部屋に戻り、明日に向けての準備をした。

俺が造ろうと言ったこの国だが、本当にここまで発展すると思わなかった。

俺達の仲の良さがここまで連れてきてくれたんだろうな。

だからこそ、一番怖いのは内部崩壊。

国という都合上、絶対的な『王』が必要だ。他の国に示す元首が。

俺達の中で上下は生みたくないが、生まれてしまうのだろう。

……悩みは尽きないな。


「さっ、俺も寝るかな」


 サッとシャワーを浴び、すぐに寝た。

このベースには、自己完結式水浄化施設も付いているので、水に困ることは無い。ほんとすげえな、澪。

だからこそ、彼女には頑張ってもらわなければならないが、それと同時に休暇もあげないとな。パンクしちまう。

あ~でも、今あいつが動いてくれなきゃ農業とかの機械も進まねえし……ッ~~!!!


本当に悩みは尽きない。





……まあ、最近の悩みは、俺が目を覚ませないタイミングで誰かが布団に潜って来ることなんだがな……


 静まり返った悠の部屋には、蒼色に染まった瞳があった。



蒼い瞳……?

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