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幕間 嘘つきは魔王の始まり/偽りだらけの勇者パーティー

 それは幻魔王がクララ姫をさらう数年前に開かれた悪巧みの話。


「娘を攫ってみないか? ルダージュよ」

「……………………………………は?」


 大事な話がある、とマクゼクトに呼び出され、ルダージュはいよいよクララとの婚姻の話が本格的に進むのかと緊張した面持ちで未来の義父の私室へと足を運んでいた。

 宮廷魔法使セルティア・アンヴリューの精霊ということでマクゼクトとは頻繁に顔を合わせる仲になっていた。部屋に到着次第、まずは一献(いっこん)とマクゼクト秘蔵の酒を手渡される程度には関係も良好だった。

 そして挨拶もそこそこに本題へと話は移ろい――先ほどのトンデモ発言が王から飛び出したのだ。

 口に含んでいた酒を思わず吹き出しそうになったルダージュを誰も責められはしないだろう。


「大事な話があるからって来てみれば、藪から棒になんですか? もしかしてもう酔っているんですかお義父さ――」

「誰がお義父さんだ! 我は貴様の父親になったつもりはないぞ!! 娘もやらん!!」

「言ってること滅茶苦茶じゃないですか……」


 ルダージュとクララの関係は表沙汰にはできないが将来を誓い合った仲である。過去の紆余曲折を経て恋仲となり、今では世間に隠しながらお互いを思い合っている。それはマクゼクト王も認めており、王族関係者にとっては周知の事実でもあった。

 ルダージュのお義父さん呼びはこの場の冗談ではあったが嘘ではない。マクゼクトの「お前に娘はやらん!」という定番発言も――本気ではあるが真意ではなかった。

 ルダージュの疑念はマクゼクトが続けた言葉により氷解する。


「滅茶苦茶ではない。我の言葉に矛盾は存在せず、提案は本気だ」

「どういうことですか?」


 豹変した怒り顔から打って変わり、マクゼクトはいたって真面目な表情を作った。


「簡単な話だ。我からクララをやることはできない。だから“さらえ”と言っているのだ。この意味が分かるか? 灰騎士」

「……」


 問われ、ルダージュは考えた。

 クララとの関係を公表できないのは彼女が王家の姫であり立場があるからだ。対してルダージュは世間一般では伝説の人型精霊『灰騎士』で名が通ってはいるが、権力があるわけではない。二人を取り巻く環境は単純ではあるが、解決できるほど簡単ではない。


「クララに何かあったんですか?」

「表向きの婚約者――つまりは許嫁が決まった。無論、お前ではない」

「!?」

「詳細はどうでもいいから省くが、相手の手回しが小賢しくてな。我ではもう手に負えない段階まで来ている。おそらくクララが15歳を迎える前には正式に許嫁として認めることになる」

「……だから、そうなる前に“さらえ”と?」

「そんなところだ。正確には許嫁になってから攫うことになると思うがな。我も大事な娘を貴族のバカ息子にやるつもりはない。どうだ? 乗るか?」


 まるで睨みつけるような鋭い眼光。

 ここで断るような小心者には「娘はやらん」という父親の本気の顔だ。

 だからルダージュは考える前に口を開いた。


「愚問ですね。俺はクララのためならなんでもできるんですよ? お姫様の一人や二人攫ってみせますよ。例えそれがクララ本人であろうとね」

「……ふん、気に食わないがいい面構えだ」


 男親としては複雑な心境なのだろう。

 鼻で笑うマクゼクトは面白くない顔をしながらもどこか嬉しそうな声色をしていた。


「――よし、ではルダージュよ」

「はい」

「お前、魔王になれ」

「……はい?」


 そしてマクゼクト王による悪巧み(シナリオ)の全貌が明らかになる。


 ±


「……つまりまとめると、俺が『黒騎士』の姿で幻魔王を名乗りクララを攫って行方をくらます。王国は討伐隊の編成という名目でクララの護衛を集め、俺とクララに合流。城に閉じ込めていた分、クララはお忍び旅行もできて一石二鳥と」

「そうだ」

「口で言うのは簡単ですけど『黒騎士』の正体が俺だってバレませんか? 『黒騎士』が人型精霊だと思われても困るんですけど」

「なるべく灰騎士と同じ能力は使わなければなんとかなるだろう。我の信頼できる側近やお前の事情を知っている知人に偽客(サクラ)をさせれば民衆の思考は誘導できる」

「……」


 壮大なマッチポンプだ。

 国を舞台に大立ち回りを演じなければならない大胆な計画。

 ルダージュは思い出す。

 過去にも同じようなことをして周囲を騙すことができた実績を。


(昔、学園で模擬戦をやった時と同じだ。……あいつのように観衆を煽るような協力者がいれば無謀な計画ってわけでもない、か。規模は段違いだけど)


 今は敵となったクレイゼル・ブライトは人心掌握に長けていた。彼のような味方、そして彼のような敵に裏切られない限り『黒騎士』の正体がバレることはないだろう。


「幻魔教の動きが読めないな……」


 苦い記憶を思い出しながらルダージュはふと懸念点を口にした。

 幻魔教はルダージュではなく本物の幻魔王を創り出そうとしている。黒騎士が幻魔王を名乗った場合、幻魔教の信徒たちの行動は未知数だ。


「奴らに我々の嘘は通じないだろう。だがそれも計画の内に過ぎない。鳴りを潜めた幻魔教を炙り出せれば排除することも可能だ。もし奴らが「『幻魔王』の正体は灰騎士のルダージュだ」と世迷い言を並べるなら不敬罪で首を吊るしてしまえばいい」

「穏やかじゃないですね……もしかして今まで俺に黒騎士の力は使うなって釘を指していたのはこの計画のためだったんですか?」

「……さて、昔のことだから忘れてしまったな」


 例えルダージュの推測が事実だったとしても、マクゼクトが素直に頷くことは難しい。

 なぜならそれは釘を刺した当時から愛娘(クララ)とルダージュの仲を認めていたと同義だからだ。どんなに親バカな姿を見せようと、始めからルダージュに娘を攫わせる計画を立てていたなど口が裂けても言いたくなかったのだ。


「それにこの計画は(きた)るべき本物の幻魔王の降臨に備えるためでもある。民に警鐘を鳴らし今一度幻魔の脅威を再認識させる。可能であれば他国への協力要請を行い戦力増強を狙う」

「そんなにうまくいきますかね?」

「まぁ、無理だろう。むしろ魔王に姫を攫われた間抜けな国だと揶揄されるのが関の山だ。実行する前に内容を煮詰める必要はあるだろうな」


 ただ、とマクゼクトは言葉を続ける。


「大筋は変わらない。幻魔王がクララを攫い、その後なんやかんや時がたった後、灰騎士が幻魔王を打ち倒しクララを救い出す。その功績を我が認めて晴れてルダージュは公私共にクララの婚約者として認められるのだ。穏健派の身分第一主義者の貴族どもも口答えできまい」


 余程煮湯を飲まされているのか豪快に笑うマクゼクトだが目が全く笑ってはいなかった。


「一国の王とは思えないほど悪い顔してますよ」

「勇者殿と同じことを言うな」

「アルフォス学園長と? あーそれはまぁ当然じゃないですか?」

「なに?」


 顎でしゃくり続きを促すマクゼクト。

 ルダージュはわざと得意げな顔を晒しこう答えた。


「魔王を倒すのはどこの世界でも勇者って決まってるんですよ」


 言外に王の悪巧みに乗ると宣言したようなものだ。

 その発言を受け、マクゼクトは今度こそ不敵に破顔した。


「口達者な男だ。だがその心意気は好ましい。だからこそ改めて命じる。我から娘を攫い、そして救い出せ。

 世界を騙すのだ――


『灰騎士』のルダージュよ」



 ±



「――グレイ」


 身体が揺り動かされる。


「起きて、グレイ。寝てるんでしょ? そろそろ馬車の停留所に着くって」

『――ん、もうそんな時間か』


 ルダージュが目を開けると仮面に遮られた視界の先に1人の少女が映った。

 ディエナ・ジル・フリーク。

 行方不明の兄を捜す家族思いの少女。兄レイフォンから名を借り、妖精と旅をする冒険者――『妖精使い』のレイン。


「? どうしたの? じっと見つめて。まだ寝惚けてるのかしら」

「きっとレインの可愛さに今頃気づいたのよ! 今頃仮面の下で卑しい顔でにやけてるに違いな――」

「やめなさい」


 レインが妖精カレアの尻を指で弾くと「ひゃっ!? えっち!」と飛び上がり、そのまま馬車の中を旋回した。

 ルダージュはそんな彼女達を眺めた後、己の膝を枕にしている召喚士を見下ろした。


『セルティアも起きようか――って、寝てなかったのか?』


 声をかけている途中で、目が合ってしまった。

 どうやらセルティアもルダージュのことを見上げていたらしい。


「せっかくグレイの膝枕を堪能できる機会なのに寝るのはもったいないですから」

『そんな大層なものでも無いんだから寝れる時に寝ておかないとダメだろ? クゥなんてぐっすりだぞ』


 そう言ってルダージュは銀狐の頭を撫でた。

 銀狐のクゥはルダージュの胡座の上で毛玉のように丸くなり寝息を立てていた。無意識なのか彼の手に頬を擦り寄せ、どことなく幸せそうだ。


「なるほど。ちゃんと寝ていればそうやって頭を撫でてもらえたのですね。不覚です」


 上半身を起こしていたセルティアが再びルダージュの膝を枕にして横になった。今度は目を瞑りわざとらしく寝息まで立てている。

 時折ルダージュを「チラ」っと見つめては何かを催促するように狸寝入りを繰り返した。

 

『困った召喚士様だ』


 呆れつつも頭に手を置くルダージュと、心なしか表情が和らいでいるように見えるセルティア。

 そんな通じ合っている2人を見て、


「……あなた達って一応私の護衛よね? 緊張感とかないの?」


 半眼のレインが小言を口にする。


「後、前々から気になってたんだけど、2人はその……恋人同士なの? 専属の美容師にしては距離が近すぎると思うんだけど」

『あー……恋人ではないな』

「恋人ではないですね」

「その体勢で言われても説得力にかけるわね……」

「レイン~? お似合いの2人がちちくり合ってるからって僻み?」

「うるさい」


 レインが煙たそうに手を振ると、カレアはすり抜けるようにホバリングしセルティアの髪へと着地した。


「髪に触れないでください」

「え!? ばっ……ばっちくないよ?」

「そういう意味ではありません。グレイ以外にはあまり触られたくないだけです」


 カレアを手のひらに乗せ、真顔でのたまうセルティア。

 流石の妖精もこれには「そ、そっか」とたじたじだ。


『気を悪くしないでくれると助かる。彼女は昔からこうなんだ。一時期は自分の精霊にすら触らせなかったぐらい徹底してたんだ』

「まあ、髪なんて他人に触れさせるような場所でも無いからね。うちの妖精が馴れ馴れしいだけよ。ほら、カレアも早く帰って来なさい」


 ごめんなさーいと帰っていくカレアと少しバツの悪そうなセルティア。

 無表情なのでグレイにしかわからない感情の機微だ。


『髪の話ついでにそろそろ色を変えとくか』


 話題を変えるためにグレイは懐から小さな宝石が付いたイヤリングを取り出した。


「それは?」


 話の流れが見えず、レインが首を傾げる。


『変装用の魔導具だ。メイド服を着てないとはいえ宮廷魔法使のセルティアは目立つからな。今の服装に合わせて髪色も変えたほうがいいだろう? セルティア、耳を貸して』


 セルティアが耳元の髪をかきあげ、グレイは慣れた様子で彼女の片耳にイヤリングを取り付けた。するとその瞬間にセルティアの長い髪が根元から毛先まで一瞬で金髪に染まり上がった。


「すごい……」

『友人の特注品で正確には髪を染めているわけではなくマナで周囲の視覚情報を誤認させているらしい。俺も詳しいことはわからない』


 魔導具の解説をしているとグレイの身体が小さく揺れた。セルティアが彼の気を引くために袖をくいくいと引いたのだ。

 そして金色に染まった長い髪を両腕でかき上げポーズを取る。どうやらグレイの感想を待っているらしい。


『……いつもの髪色も好きだが、やっぱり金髪だと目に馴染むな』


 馴染む?

 褒め言葉なのかしら?

 と、レインが疑問符を浮かべるが、告げられた当の本人(セルティア)は期待通りの感想を得られたのか満足そうに頷いた。


「あとで髪を結ってくださいね、グレイ」

『仰せのままに』


 仲睦まじい2人の様子に「いちゃいちゃしちゃってまー」とカレアですら呆れ気味だ。どことなく羨ましそうに見えるのはレインまでもが毒されてきているからだろうか。


「……でもそれなら私も変装した方がいいんじゃない?」


 空気を変えるためにレインが話題を戻した。

 レインが加護持ちであることは他国の上層部に知れ渡ってしまっている。強大な精霊の力を手に入れるためにレインを狙う組織が現れるのは目に見えていた。

 敵に遭遇しないため正体を隠す、という点においてはレインも変装をした方が最善ではあるだろう。


『わかりやすすぎる目印が俺たちのパーティーにはいるからな……あまり意味はないだろう』

「目印? ――……あーそれもそうね」


 得心がいったのかレインが頷く。

 2人の視線の先には宙に浮いたカレアが「え? なに? モテ期?」と惚けたことを口にして品を作っていた。


妖精(・・)使いの時点でレインであることはほぼ確定だからな。正体を偽るにも限度がある。逆に考えればカレアが表に出てこなければそうそうバレることはない、とも言える』

「えーもう街中では飛ぶなってこと?」

『極力な。そもそも妖精というだけで注目度は高いし、悪目立ちは避けられない』

「いつもみたいに私の服に隠れてなさいってことよ」

「ぶー」


 カレアは拗ねたように頬を膨らませそのままレインの頭へと着地する。


「じゃあじゃあ! グレイはどうするのさ! 全身黒ずくめで仮面まで被っちゃってさ! 不審者そのものじゃん!?」

「ちょっ――!?」


 指摘する(ツッコム)のを我慢していたのに!

 相棒を黙らせるべくレインの手が頭上へと伸びるが無情にも空を切る。


「そこんとこどうなのさ!」

『……自分で言うのもなんだが万屋シラクラは知名度がない。当然、店主の俺も無名だ』

「ほう」

『周囲の人間はまず俺が万屋のグレイだとわからない。わかったとしてもそもそも『加護持ち』の護衛任務は極秘だ。俺の隣にいてもレインには結びつかない』

「ふむふむ」

『それに俺は……逆に脱いだ方が目立つ』

「え? そりゃあ~全裸はヤバイっしょぶへ」

「茶化さないの」


 今度こそレインに鷲掴みにされ、手足をばたつかせるカレア。「ギブ! ギブ!」と喚き散らすがレインは離すつもりがないようだ。


「じゃ、じゃあ! イケメンすぎて仮面を取れない! とか?」


 性懲りも無くカレアが冗談を言い続け、グレイが困ったように笑う。


『ご期待に沿えず申し訳ないが、俺は別に――』

「かっこいいですよ」

「え?」

「おっと?」


 答えに窮していたグレイに代わり、セルティアが無表情ながらもどこか力強い口調で宣言した。


「グレイは、かっこいいです」

「2回も言ったわね」

「きっと大事なことだったんだよ!」


 ひゅーひゅーとカレアが囃し立てる。


『……セルティア。気持ちは嬉しいが話が進まないからその辺で勘弁してくれ』

「照れてるー!」

「照れてるわね」

「きっと顔も赤いはずです。恥ずかしがっている彼は本当に可愛くて、見分けるコツは――」

『わかった。わかりました。俺の負けでいいからこの話はやめよう。やめにしてください』


 グレイが音を上げたことでセルティアが満足そうに微笑んだ――ように見えた。実際は「今の表情を見れないのが残念でなりません」と小さく呟いただけだったのだが、『しつこいぞ』と呆れながらもどこか優しい声色のグレイとのやり取りから信頼関係の深さが窺え、それが周囲を錯覚させたのだった。


「ふふん、とりあえず勝ったわ!」


 なぜかカレアが勝ち誇りガッツポーズをとる。

 グレイはツッコム気力もないのか『もうそれでいいよ……』と項垂れた。


『……話を戻すと、俺はグレイのままレインを護衛する。そしてセルティアは――』

「ティア」

『今後は髪色を変えているときはティアと呼んで統一しよう』

「安直ねぇ……って、うちのレインも似たようなもんか!」

「うるさいわね」


 レインが悪態をつき虫のように飛び回るカレアを叩き落とそうとするがうまくいかなかった。

 

『まとめるが、いいか?』

「……お構いなく」


 佇まいを正すとちょうど三人できれいな三角形を描けるような配置で向かい合う形となった。


『妖精使いのレインは今まで通りレインとして、宮廷魔法使セルティア・アンヴリューは魔法使いの冒険者ティア、何でも屋の俺は傭兵として雇われた助っ人のグレイ。この三人と――』

「あたしのことも忘れないでね!?」


 カレアが「はいはいはい」と手を挙げる。


『もちろんだ。この三人と一羽――』

「くぅ!」


 今度はグレイの胡坐で上で丸まって寝息を立てていたはずのクゥが自分のことも忘れないでと鳴き声を上げた。


『大丈夫、忘れてないよ。クゥも含めてパーティーだ』

「くぅ~」


 グレイが頭を撫でるとクゥは気持ちよさそうに目を細めた。

 まるですべての会話を理解しているかのような態度だ。


「聞きそびれてたんだけど、どうしてその子を連れてきたの? 私たちと一緒にいたら危ないんじゃないの?」

『心配には及ばない。この娘は俺が責任をもって守るし、傷1つ付けるつもりもない。このコートを着ているのもクゥが隠れるところを用意するためだし、そもそも俺が城に顔を出していたのはクゥを預かるためだ』

「へーそうだったんだ。それも万事屋の仕事ってやつ?」

『半分正解で半分外れ。これ以上は依頼主から口止めされていて答えられない』

「ふーん、まあいいけどね。またよろしくね、クゥ」

「く!」


 レインが挨拶をするとクゥは嬉しそうに尻尾をぱたぱたと振り彼女の膝の上に飛び乗った。


(カレアとの二人旅がたった数日で二倍以上に……騒がしくなりそう――でもないけど頼もしくはあるわね)


 レインは改めて旅の道連れ達を見回し、名を呼ぶことにした。


「妖精カレア」

「……お? はーい、最強無敵のカレアちゃんでーす」

「銀狐のクゥ」

「く!」

「魔法使いのティア」

「はい」

「傭兵のグレイ」

『ああ』


 察しのいいカレアを皮切りに各々が反応を示す。


「……なんというか癖のあるパーティーになりそうね。傍から見たら相当胡散臭いかも」

「偽名しかいないんだから当たり前じゃん! ね? 冒険者の“レイン”ちゃん?」

「……それもそっか」


 くすりと喉を鳴らしレインが笑う。

 兄を捜すだけの孤独な旅が魔王を討伐し姫を救い出す冒険譚になろうとしている。

 偽りだらけのパーティーにしては分不相応な目的だ。だが不思議と成し遂げてしまうのではないかという根拠のない自信がレインにはあった。


『……』


 グレイはそんな彼女を仮面の奥で見つめた。

 妖精と笑い合う、年相応の笑顔を見せる(レイフォン)の妹のことを。

 そしてティアもまた同じように彼のことを見守っていた。

 自責の念に駆られた顔を隠し、決意を胸に秘めた(グレイ)という名の嘘つきを。

 ただ「君を守りたい」と願うだけの、嘘の冒険が始まった。


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