最後の騎士団
惑星デュプト。
八割が陸地のこの星は、緑豊かで多種多様な生物であふれる世界だった。
ある時、空中に特殊な成分――後に魔素と呼ばれる物。が発見され、そこから魔法と呼ばれる術が生まれた。さらには魔法に頼らない職人たちの技術が新たな利便性の高いものとして、機械を生み出した。人々は競い合うように技を磨き続けた。その結果、人の力では制御できない物を生み出してしまうことになり、放置するようになった。
そして悲劇は起きた。地上の八割が同時に天変地異の異常発生に見舞われ、多くの命が消える。生き残った者たちは安全な土地を求めて争いが勃発。終わりの見えない戦争の時代へと突入した。
そのような中で、原因を取り除き失われた土地を取り戻すことを目的とした組織――解放騎士団が誕生した。
最初は魔法を駆使して災害を取り除こうとしていたが、災害の中でも適応した生物、災害そのものを発生させる原因となっている生物や機械の存在が邪魔をした。
そこで、生存していた職人たちが災害領域で行動、自衛ができるように巨大人型調査機構――通称機兵と呼ばれる機械に人が乗り込み操ることで、災害に対処しようと考えた。
しかし、彼らの思いにすべての人が答えることは難しかった。
彼らの機兵の設計図は僅かな土地を奪い合う人間たちの手に渡り、兵器として使われていき、騎士団は各国から機兵と共に配下となって戦えと言う。彼らは決して従おうとはしなかった。そして、邪魔者として命を狙われるようになり、土地を取り戻そうとした彼らの思いは一つも成し遂げることが出来ぬまま歴史に埋もれていくのであった。
それから300年の月日が消えることのない天災と共に流れていった。
「爺ちゃん。ようやく完成したよ」
一人の若者が簡素な墓の前で口を開いた。手に持っていた一輪の花を置き、手を合わせる。
「まさかこれだけの時間がかかるなんて誰も思わなかったよな。設計図が書かれてから300年近くたつんだろ? ほんと、誰も諦めずにいたなんてすげぇよ」
若者はすぐそばに置いてある巨大な物体を見上げた。大型戦艦ギガス・エクエス。それが物体の名である。
「……俺、爺ちゃんと血が繋がってないけど、拾ってくれたこと、育ててくれたこと、目的をくれたことに感謝してんだ。だから……俺はこの世界から災害を取り除いてみせるよ爺ちゃんの願いを叶えたい」
もう一度若者は墓を見る。
「行ってきます」
立ち上がり、戦艦へと歩を進める。
若者の名前はアレウス。最後の解放騎士団である。
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