表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編集。

虐殺テレビジョン

作者: ぷちミント

「二時間で二人。次の二時間でまた二人。次に一時間で一人。

一日で五人も。噂は本当だったんだな」

 人を殺しまくるテレビがある。そんな噂が流れていた。

 青年はその噂に興味を持ち、そのテレビの動向を探っているところである。

 

 偶然にも青年は、その殺人テレビのある家の住民だったため、

 これ幸いと調査をしている。

「今週、今日は水曜日。一週間で何人殺してるんだ、うちのテレビは?」

 窓の外に視線をやって、青年は溜息をついた。

 一週間の間で、いったい何人自分の家のテレビは人を殺しているのか、と。

 

「後四日か」

 めんどうそうにつぶやいて、青年は気持ちを新たにした。

 

 

*****

 

 

「一週間、昼までで15人。ほんとに、虐殺テレビだな、こりゃ」

 日曜日の昼間、調査終了とばかりに青年は苦笑いをし、

 そして食事のためにリビングに向かった。

 

 

「ほんと、サスペンスとかミステリーとか見すぎだろ」

 食事を始めて開口一番、青年は目の前の家族に愚痴るように発した。

「しょうがないじゃない、他に見る物お昼にないんだから」

 母親に切り返されて、「それはいいんだけどさ」と青年が切り返す。

 

「ボリュームでかすぎるんだって。

『またあそこのうち殺人事件起きてるよ』って、ご近所さんの笑いものなんだぞ。

『人を殺しまくるテレビ』って、都市伝説みたいな扱いまでされる始末だし」

「ああ言うのは迫力が命だろうが、小さいボリュームで見てたら台詞聞き取りにくいし」

 父親が軽口を返して来る。

 

「たしかに、音楽が無駄にでかいからその気持ちはわかるけどさ。台詞まででかいから、

ご近所さんになに見てるか丸わかりなんだって。俺なんか最近じゃ

パトカーの音が実際鳴ってても、またドラマかって思うようになったよ。

狼少年状態だよ。ほらぁまた人死んだー」

 

「で、お兄ちゃんはうちがいったい一週間に何本そういうドラマを見てるか

興味が出て調べてたってわけか」

 妹が訳知り顔で納得している。

 

「そういうこと。とりあえず。五つはボリュームさげてくれ。

ご近所さんに見られると、『今日は再放送だったわねー』とか、挨拶代わりに

うちのチャンネル事情をネタにされて恥ずかしいんだよ」

 息子にそう言われた両親、母親が先にリモコンを操作するため食卓を立った。

 流石にご近所さんにプライベート丸聞えは、両親に羞恥心をうんだようである。

 

「これで都市伝説はおしまいだ」

「そっかー。ちょっと、この迫力が癖になってるとこが、

ないわけじゃないんだけどなー」

「バカ、そういうことはこっそり言え! ほらボリューム戻しただろう!」

 悲痛な兄の叫びがリビングにこだまするのであった。

 

 

 とある家には、人を殺しまくるテレビがある。

 たとえ隣近所にそのテレビの動向がわからなくなったとしても、

 その殺害件数が減ることは、なさそうである。

 

 

 

 

 

    F()I()N(オフ)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 頭の悪い香月は、三度読み返してようやく内容を理解しました^^; 確かにこれはコメディーだ~(笑) 普段、ラジオばかりBGMにしていて、基本テレビを観ないので、実感沸くのに時間がかかってしま…
[良い点] うちのTVもメンタリストとNCIS 〜ネイビー犯罪捜査班と相棒にはまったせいで一日何人と殺人事件を起こしてきました。 これだけ人が死ぬものを見てると生とは死とは、とか考えるようになりました…
2021/09/30 00:35 退会済み
管理
[良い点] 活動報告見てから読みました(*´艸`*) だってホラーは苦手なんですよ~w BGMのほうが大きくてセリフが小声ってのは、アニメでもそうですね。 「へー、最近こんなのやってるんだ」と数秒程…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ