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いろとり色とりどりの花々が咲き誇る庭園は海の底にいることを忘れてしまいそうな程美しい。
ユナとイエニスタはガゼボで優雅に庭を眺め用意された紅茶を口にする。
「まずは落ち着いて、そんな様子では判断力が落ちますよ。」
「…はい。」
「貴女のことですからきっと早く解決しなければと焦っているのでしょう。
きちんと周りの者の能力を把握し、冷静に見極めなさい。」
「…はい。……何だか懐かしいです。」
「ふふふ。もう立派な大人ですが、私にとってはまだまだ可愛い子ですから。迷った時は頼って良いのですよ。
一人で考え込まないで、昔とは違って仲間がいるのです。」
イエニスタは立ち上がると優しくユナを抱きしめた。
その温かさと柔らかさは安心を与え、先程まで働きすぎていた頭がリセットされる。
「行ってらっしゃい。」
「はい…行ってきます。」
イエニスタがゆっくりユナから手を離すと、少し名残惜しそうにしながらもユナは立ち上がった。
「そろそろ行きます。」
庭園を後にしてエントランスに向かうとすでに準備が終わったバーンと見送りのヴィルーヴとユンギが談笑していた。
「お待たせ!」
「おう。」
「行きましょう。」
ユナは転移を使いバーンと共に地上に戻った。
残された残されたヴィルーヴとユンギがどうするか悩んでいると、イエニスタが良い暇つぶしがあると声をかけ三人で城の中に入っていった。
一方、転移したユナとバーンはベベルのガッタの家の目の前にいた。
予想外の転移場所にバーンは一瞬何処にいるのか分からず焦っていたが、落ち着いてくれば見慣れた風景にすぐに把握できた。
「まずはバーンの折れた剣を治してもらわなきゃでしょ?」
「あ……そうだったな…あああぁぁぁ絶対に怒られるっ!」
バーンは気が重そうにドアをノックして声をかける。
するとドアはすぐに開かれ、何かを察したガッタは家に入れる前にバーンの頭にゲンコツを落とした。
「痛っ!!!ひでぇ…まだ何も言っ出ないのに!」
「ふん。言わずともその顔を見れば分かるわ!!どうせ剣が欠けたか何かしたんじゃろ?」
「ちげーよ。折れたんだ。」
「尚更悪いわいっ!!」
ガッタはもう一度バーンの頭にゲンコツを落とすと早くみせろと家の中に入った。
折れた剣をガッタに預けるとユナはハルバードに連絡をしてベベルにいる事を伝える。
するとまた見覚えのある馬車が迎えに来てデジャブしながら城に向かった。




