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朝、眠りから覚めたユンギは目を擦りながら起き上がった。
気持ちいい朝日を浴びて伸びをするとユナの様子を確認しようと隣を見る。しかし、そこにはユナともう一人見知らぬ女性の姿がありユンギは首を傾げた。
「……誰?」
ユンギは対応に困り、とりあえずユナの顔をペシペシ叩いて起こしにかかった。
「ん~なに…。」
「ユナ、起きて。不審者。」
「ん~まだ寝かせて…。」
全く起きる様子の無いユナの服の中にユンギは氷のつぶてを放り込んだ。
するとヒッと短い悲鳴をあげたユナは、飛び起きその冷たさに必死服の中から氷を出そうとする。
「ユンギ!!」
「私、悪くない。不審者だって言ったのに起きないユナが悪い。」
「不審者?」
ユナはまわりをキョロキョロと見るがそんな人物は見当たらない。
再びユンギをみるとユンギは布団でスヤスヤと眠る女性を指さした。
「改めて、私の師匠です。」
「皆さん初めまして。魔女のイエニスタと申します。私の愛弟子、ユーレンカがお世話になっております。あ、今はユナ…でしたね。」
「師匠にユナと呼ばれると不思議な気持ちです。」
朝の支度が済んだところでバーンとヴィルーヴを部屋に招いたユナはイエニスタを紹介した。
イエニスタはまるで黒曜石のような艶のある髪と瞳、更にはユナには無い大人の色香でヴィルーヴとバーンを魅了するがバーンは首をブンブンと振り正気を保った。
「はぁ…まぁ師匠は綺麗だし正しい反応何だろうけど…。何だか腹が立つのは何でかしら…。」
「ユンギも…。」
「ふふふ。皆さん可愛らしいですね。」
「そりゃー五百年は生きてる師匠からしたら私たちは子供かもしれませんけど…。」
「「五百年?!」」
「この美貌で五百歳!!」
「…魔女でイエニスタ……まさかとは思いますが“悔恨の魔女”ですか……?」
イエニスタはニッコリ笑い否定も肯定もしない。ヴィルーヴは顔を真っ青にし、すぐさま膝まづいてまるで王族にでも会ったかのように綺麗な礼をした。
「ヴィルーヴ、どうしたんだ?てかその悔恨?の魔女って何…。」
「バーン…児童向けの絵本で“ドラゴンの花嫁”というものを知りませんか?」
「いや超有名なやつだから。流石に知らない奴はいないだろ。」
「本人です。」
「……は?」
イエニスタは二人のやり取りをただ笑顔で見守った。




