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「はい、今日は色に関する魔法を覚えましょうね。」
「「はーい!」」
(…あれ、私…。)
「まずはペイント!イメージは水球に近いけど相手に着弾した時の色のイメージも必要ですよ。」
「「はーい!」」
(これは…過去の……夢?)
ユナは夢を見ていた。
それはドーラと共に魔法の修行をしていた、マトモに魔法が使えなかった頃の夢で数少ない幸せな記憶。
ドーラと共に学び成長した日々が目の前にあった。
「さあ、今度は二人に問題です。始祖龍様は何処で何をしているでしょう。」
「はいはーい!ドーラわかるよ!!」
「私もわかるわ!」
「ふふふ。じゃあ一人ずつそっと教えてくれるかしら?」
「じゃあ私からね!」
「あっ!ずるい!!ドーラからっ!」
「え~。」
(あっ!待って!!もう少しだけ…。)
だんだんと夢から遠ざかり己の意識の覚醒が近いのがわかる。
慌てて手を伸ばすがもうその夢が近づく言は無かった?
目が覚めたユナは懐かしさと少し寂しさを感じたが、隣でスヤスヤと眠るユンギに暖かい気持ちになり思わずクスリと笑ってしまう。
「師匠…元気かしら。」
窓を開けて夜空を見上げながらポツリと呟く。
あまり開けていてはユンギが風邪を引いてしまうので直ぐに窓を閉めて再度眠りにつこうとすると、すっと部屋に影が落ちた。
「ええ、とても元気ですよ。」
その声は窓の外からした。
ユナが驚き振り向くと、そこには懐かしい女性の姿がありユナは窓を開けて抱きついた。
ただ溶けていくだけの言葉だったはずなのに懐かしくて優しい女性の声で返されユナの心は一気に熱をもった。
「師匠っ!」
「はい…お久しぶりです。」
「本物ですか?」
「もちろんですよ。ちゃんとメッセージを残したのに中々来ないんですもの。迎えに来ちゃいました。」
師匠と呼ばれた女性は抱きつくユナの頭を愛おしそうに撫でながら優しく微笑む。
「すいません。メッセージはつい最近見たのです。元々の目的地も師匠の居場所も一緒だったので今向かっている最中でした。」
「そうだったのですね。でも、飛んでくれば早いのに。」
「今は仲間と旅をしているのです。」
「仲間…そうですか。ドーラしか友達がいなかった貴女に仲間が…。」
ユナは段々と落ち着きを取り戻し、子供のように抱きついている事が急に恥ずかしくなった。
バッと手を離すと少し頬を染めながら俯く。
「ふふふ。いつの間にかお姉さんになってしまったようで寂しいですね。それにしても…仲間が出来てるとは予想外ですね。このまま連れ去れば心配をかけてしまいます。今から起こしましょうか!」
「師匠、今は深夜です。朝まで待って下さい。」
「では朝まで一緒に眠りましょうか。」
ベッドは決して広くは無く、小さいとはいえユンギが一緒に寝ている。
普通なら無理だと言うところだがユナはそれに甘んじた。




