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「うん…惜しい感はあるわ。」
「「……。」」
ユナは己の腕の限界を少し残念に思った。
ヴィルーヴは前職で身につけたのか完全な老婆に変装している。
鍛えているので体格は良いがケープやワンピースの形でそれ等を上手く隠し、一目ではバレないだろうと思われる。
問題はバーンだった。
顔は整っているのでメイク映えはする。が、ゴツイ。
女性の中にも格闘家はいるのでそちらの分類に見えなくもないが、女性らしい仕草など身についていないバーンは立っているだけで男だった。
「さっ、冗談はここまでにして…。」
「まて、コレ冗談で済ませるのか?」
「冗談以外になんて言えば良いのよ。」
「なるほど…バーンの立ち位置が理解できましたよ。」
「ヴィルーヴ…。」
和やか雰囲気の中部屋のドアがノックされ許可もしていないのに不躾にドアが開けられた。
「失礼する。こちらに手配書に似た人物がいると聞き…。」
「「「「「………………。」」」」」
部屋の中は沈黙し入ってきた二人の兵を含め全員が動くことなく数十秒気まずい空気が流れる。
それを壊したのはユナの笑顔だった。
「許可も無いのに部屋に入るなど不躾ですね。」
「あ、申し訳ない。」
「で、手配書がまわるような覚えは無いのですが。」
「あ、いや、人違いだったようだ。」
「それなら良かった。ところで、街から出たいのに封鎖されていて困っています。今どういう状態なのですか?」
「それはだな。重要人物を探しており逃げないようにした処置だ。見つかれば解ける。では失礼する!」
兵達は部屋から去り完全に部屋から遠ざかったのを確認して全員がため息をついた。
「まさかバーンにノータッチとは…。」
「やっぱり私の腕が良かったのかしら。」
「いやいや、俺を見て凍り付いてただろ。完璧にヤバいやつだって思われてただろ。」
「何にせよ、ユンギを妖精化してて良かったわ。」
その後直ぐにバーンは服を脱ぎ捨てた。
流石に着替えを覗く訳にはいかないのでユナとユンギは部屋に戻り暇を持て余す。
「聞いてなかったけどユンギはあの子と付き合ってみたい?」
「興味無い。」
バッサリ斬り捨てたユンギは外を見てくると窓から飛び去った。
一人になったユナはハルバードに連絡をしてみるが忙しいのか繋がらない。
やることも無くベッドに倒れ込むと何か面白い事は無いかと考えている内にユナは眠りについた。




