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「ヴィルーヴさんが信用出来るようになったのでもう一人仲間を紹介します。」
ユナはユンギの首に<化>と書いてあげる。するとユンギは光だし妖精の姿から人間の姿に変化した。
「な?!何処から現れたのですか?!」
「実はずっと居ました。妖精のユンギです。」
「妖精…?まさか、そんなの絵本の中だけの話でしょう…。」
困惑するヴィルーヴがまるで過去の自分を見ているかのようで、バーンはその肩を叩くとウンウンと頷く。
「認めたく無い気持ちはよく分かるが真実なんだよ。」
「ほ…本当に…ですか?」
「ああ…ヴィルーヴ、あんたが選んだ主は普通じゃねぇ。強靭な心臓が必要だ。」
「バーン…貴方……。」
言葉ではなくその心が通じ合い自然と力強い握手を交わすバーンとヴィルーヴ。目に見えない絆で結ばれた二人にユナは何となくムスッとした。
「何でだろう…凄く二人にファイヤーボールを打ち込みたい…。」
「さ、さあユンギ!ヴィルーヴに挨拶しなきゃじゃないか~?」
「いやいやレディから挨拶だなんて失礼ですよ!ユンギ嬢、ヴィルーヴです。これからよろしくお願いします。」
「……よろしく。」
紹介を終えたところでバーンとヴィルーヴはテキパキと夕食の準備を始めた。
ユナはモヤッとしながらも本を読み初め、久しぶりに人の姿になったユンギは暇そうにしながらバーンとヴィルーヴを眺めている。
「あの水晶…続きはいつ?」
「ご飯を食べ終わってからにしましょうか。」
「そうね。」
夕食後、再びヴィルーヴが水晶を出す。
映し出されたのは夜の城、満月の光を覆い尽くす程の大きさの一匹のドラゴンが城の上空に留まる。
「ど…ドラゴン!!」
見張りの兵が腰を抜かしそうになりながらも緊急事態発生の鐘を鳴らす。
一気に騒がしくなる城をドラゴンは何をするでも無くただ眺める。すると、ドラゴンの頭の上に人影を発見した兵が指を指しながら叫ぶ。
ドラゴンの頭に乗る人物の顔はフードとマントで容姿が分からない。
「あ!そっかなんで気づかなかったんだろう。」
水晶の映し出すものを見ながらユナは一人納得の声をあげた。
続きを見ていくと、ドラゴンに乗る謎の人物が右手を上げるとその手からは真っ黒なシャボン玉のようなものが出現し城壁を染めた。
綺麗なドット柄が出来上がると、謎の人物はドラゴンと共に飛び去り後にはポカンと空を眺める兵だけが残った。
ユナはドット柄になった城の一部にミミズが這ったような文字があるのを見逃さなかった。




