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【死神の瞳】・・・呪具。装着している者を誓約で縛りたがえれば全身の血を抜かれ命を奪われる。誓約は日が沈んでから行わなければ無効。解呪不可。魔法の影響を受けやすいので注意。
「【世界最悪のアクセサリー百科】より。」
「…怖っ!」
「そんな詳細には知らなかったですが…やはり解呪不可ですか。」
指輪の詳細を知りヴィルーヴはため息をついた。バーンはヴィルーヴに同情はするが何もできる事は無い。いや、死に方くらいは少しだけ選択させてやれるかもしれない。
「ちなみに誓いってどんな内容なの?」
「《我の命は王の物、我の意志は王の為に、王の庭は美しく、害虫と雑草は早々に狩るべし。》と言って指を切り指輪に血を付けると血が飲み込まれます。」
「その内容だと王族では無く王にしか遣える事が出来ないのでは?」
「王族というよりは王が認めた者ならば、ですね。なので殿下は除外されます。」
改めて王に認められていないと認識させられユナは複雑な気持ちになるが悲しみ等は無い。
それより死神の瞳をどうにかしなければヴィルーヴを仲間にできない方が問題だった。
「解呪は不可。魔法の影響を受けやすい…。それ、別の要因で死んだらどうなるのかな。」
「仲間が死ぬと直後にミイラみたいになってましたね。」
「ふぅん……。」
ユナは指輪をじっと見詰めた。
そして無言で転移を試みる。転移の先は毒殺された馬の死体の耳元を指定し、それは見事に成された。
「「え?」」
バーンとヴィルーヴは怪しげな音がして視線を向けた。視線の先では馬の死体がヌチャヌチャいいながらミイラ化している。
そのグロテスクな光景に呆気にとられているバーンとヴィルーヴの思考は停止していて馬の耳に転移された指輪の存在に直ぐには気付けなかった。
「どうやら成功したみたいね。」
「え?成功??」
「あ!指輪!!死神の瞳が無い!」
バーンの言葉でやっと自分の手を確認したヴィルーヴは「嘘だろ…。」と呟き驚愕する。顔を上げてユナをみると、まるでイタズラが成功した子供のような顔をしていたのでヴィルーヴは困ったように笑った。
ユナは馬のミイラに近づくと気持ち悪さに耐えながら指輪を回収して収納にしまった。
「これで問題は解決ね。」
「元王女と王の犬と妖精のパーティー…俺の存在が薄いっ!」
「ん?妖精?」
「そ、そんな事より私が居なくなってからの城の様子が知りたいな!」
ユナはバーンを睨みつけて必死に話を逸らした。




