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「なかなか活気があるとは言い難い街ね。」
「まあな。この街は大体の奴が早々に通過するんだよ。なんせ野盗紛いのゴロツキが集まる街だからな。」
ユナとバーンは足早に街の中を歩く。
到着した街、ヘルクラムは道の端に薄汚れた者達が座り込んでいる。歩く者も少なく子供の姿は無い。
「しまったな…街に入る前に剣をユナにもらっとくべきだったわ…。」
「本当に。バーンはこの街の事知ってたんでしょ?」
「いや入るまで忘れてた。」
ユナはいまいち頼りにしずらいバーンを睨みながらユンギが妖精の姿で良かったと心底ホッとした。
こんな場所で少女を連れていたら格好の餌食になってしまう。まだ男女のペアの方が幾分かマシだ。
「ところで相談なんだがユナは馬には乗れるか?」
「流石に乗った事ないわ。」
「だよな。だから…先に謝っとくわ。ユンギはユナにしっかり掴まる事っ!」
バーンはユナの腰を抱き脇に繋がれていた馬の上に乗せると縄を切り自分も飛び乗った。
「文句は後で聞くから今は喋るなっ!」
馬の腹を思いっ切り蹴り走り去ると、後ろでは武装した目つきの悪い男達が道の脇からゾロゾロでてくる。
「あれは流石に面倒だから逃げるが勝ちだろ。」
暫く馬を走らせもう少しで街を出るところまで来くると、ユナはバーンに馬を止めさせた。
「なんだよ。後少しのところで。」
「バーン、逃げても無駄だわ。挟まれてる。」
ユナとバーンが街の出口を睨みつけると薄らと人影が見えてくる。そうしてる間にユナ達を追っていた男達は追いつき、馬のまわりを囲む。
出口から歩いてくる男達は見覚えのあるフード姿でユナは息を飲んだ。
「探しましたよ…ユリアーナ殿下。」
そう発した男の腕には蛇の刺青が見える。
ユナは仮面を付けているので姿は別人のはずだが、男は確信があるようで堂々とした態度で立っていた。
「ユリアーナ殿下?お前何言っるんだ?」
「ああ、そういう誤魔化しはいらないんで。あんたバーンでしたっけ?殿下とずっと行動を共にしてる。どういう関係か知らないが早く手を引いた方がいい。」
「……さっきから人違いしてるみたいだけど。」
「いいや。人違いなんてしてませんよ?」
ダメ元で人違いだと主張してみたユナだったが男は鼻で笑いながら否定した。
「往生際が悪い殿下の為にきちんと説明して差し上げましょう。
ミールの街では正直見失いましたよ。で、仕方なくそちらの彼に人を付けてたんですがね、アルベール国に入ったら城に招かれるわ手配書が撤回されるわで怪しい怪しい。
それで彼の傍にいる少女に注目してみたら歩き方が一緒。
ルデウス殿下から逃げるように離れ黒だなと。ここで待てば来ると思いましたよ。
昔から憧れてましたもんね。海に。」
「よく知っていたわね。ヴィルーヴさん。」




