70
「あんた…すっげぇ美人だな。」
まるで重要な事でも話しそうな雰囲気で発せられたヤンナの気の抜ける言葉にその場の全員がズッコケた。
「ヤンナお姉ちゃん…それ今じゃない。」
「ユンギの言う通りだよ。恥ずかしい…。」
「だって美人だろ?変装してた理由も分かるな。」
「いやいや、それだけじゃないよ…そうですよね。ユリアーナ王女殿下。」
ユナはにっこり王女スマイルをシンラに向けた。
王女と聞きヤンナとユンギは目が点になっている。二人共同じ顔をしているので少し間抜けさが増してバーンが肩を震わせた。
「そちらの方が誘拐犯には見えませんしご自分から国を出られたように思われますが、何故私達に姿を晒したのでしょうか。」
「それは貴女達が神の御使いに思えたからかしら。力を貸して欲しいの…」
「……私達の力をという訳ではありませんよね。」
「もちろん貴女達の力も貸して欲しいわ。」
「『も』ですか…私達では判断出来ません。」
キッパリ言い切るシンラにヤンナとユンギが大丈夫かと心配しているがシンラは揺るがない。
ユナとしてはこの場で二つ返事をしようものなら信用出来ないと判断したところなので、シンラの対応は好感を持った。
洞窟に来る前に全てを聞いているバーンは大人しく空気になっている。いざと言う時は動けるように警戒してはいるが、ヤンナの格好を眼福とガン見していたのでユナは少しイラッとした。
「ではこうしましょう。バーンとヤンナさんが試合をして勝った方の願いを一つ聞く。」
「はあ?!」
「ああ見えてもバーンは高ランク冒険者です。ヤンナさんも相当な使い手とお見受けしました。」
「試合か~悪くないな。」
「ヤン姉さん!!私達には望みはありません。つまり試合をする意味が無い。」
「意味ならありますよ。裁判官の存在の口止めができますもの。」
「それは各国の秘匿義務です!守らなければ教会はユリアーナ殿下及びガラガ王国を許さない。」
「その脅しは私には有効ではないのですよ。」
シンラにはユナの考えが全く分からなかった。
ただ一つハッキリしているのは自分が大変面倒なことに巻き込まれそうになっている事実。
「シンラ、勝負受けるぞ。」
「ヤン姉さん?!」
「強いやつとヤレるんだ。断わる理由はない。」
「この脳筋!!」
ユナはニヤリと笑いバーンに圧をかける。
「勝ち以外は認めないから頑張ってね。」
「俺の意思……。」




