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「いらっしゃい。」
「武器屋の店主さんからここなら動きやすい服があるって言われたんですけど。」
「武器屋?お嬢さん冒険者かい?そんな格好じゃ戦えないだろう。」
少しふっくらした服屋の女店主は幾つか服を見繕うと、それをユナに押し付けて試着室に入れた。
店主が選んだ服はノースリーブのタートルネックにショートパンツや膝上のプリーツスカートなどが合わせてあり露出が多く、今まで脚を隠す文化だったユナには恥ずかしく感じられたが、タイツを合わせる事で生脚は回避していたので何とか羞恥心をしまい込み店主に着て見せた。
「ど、どうでしょうか…。」
「うん!バッチリじゃないか!!流石私の見立てだね~。」
「ちょっと……脚が出ていて恥ずかしいんですが……。」
「脚を隠してるのなんて貴族のお嬢様くらいだよ!恥ずかしがってたら直ぐに魔物の餌になっちまう。それくらい我慢しな。」
結局、すすめられた服を全て購入し、今まで着ていたワンピースから黒色のノースリーブのタートルネックにショートパンツスタイルに着替え店を出た。
なれない格好で最初こそは周りの目を気にして歩いていたユナだったが、半刻もすると慣れて堂々と歩けるようになっていた。
その後、薬屋や雑貨屋などで必要な物を購入して宿屋に戻ると、また宿の前が騒がしい。野次馬の隙間から中を覗くとヘレンと昨日追い出された男が対峙していた。
「さっさと帰んな!アンタはこの店を出禁にしたはずだよ。」
「ハッ。宿屋風情が、この俺を出禁とか身の程知らずだな。俺はBランク冒険者だぞ?」
「女の子に一撃で倒されていたのにかい。」
「う、五月蝿い!!だからさっさとあの時の娘を出せと言っているだろ!!」
「執拗いねぇ。居ないよ!」
ドロップキックの恨みで押しかけてきた様子の男にユナはどうするか迷った。
ヘレンとは目が合って出てくるなと雰囲気で言われたが、放って置いても良い結果にはならなさそうに思える。
意を決してユナは野次馬の中から一歩踏み出した。
「私に用かしら。」
「お、お前はドロップキック女!!」
「もっとマシな呼び名は無いの?!」
男のセンスの無さに愕然としながらもユナは襲われても直ぐに対応出来るよう剣を引き寄せる。ヘレンも緊張した面持ちで男を注視しているが、男は何だかモジモジし始めユナは言い様のない気持ち悪さを感じた。
心なしか周りにも顔色の悪い人が増えている。
「お、俺んとこに嫁に来い!!」
「ヤダ無理ないないない。」
間髪入れずに断るが男の眼は死んでいなかった。