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「ガラガ王国の準男爵?!マジかよ…」
バーンの叫びが響き渡る中、アブカタマリーラ準男爵は「し、しらん!私は知らんぞっ!!」と全力で否定する。
「ちくしょう!全然手が出せんと思っていれば間者だったのか!!」
「女癖の悪いあなたの相手は大変だったわ。証拠は集めやすかったのだけど。」
「~~~っ!!はんっ!そんな令状無意味だ。ここはどの国にも属さない場所だぞ?」
「あなたさては馬鹿ですね?」
シンラに侮辱され顔を真っ赤にするアブカタマリーラ準男爵はピョンピョン跳ねて令状を食いちぎろうとするがシンラが、ギリギリのところでひょいと上げて防いでいる。
ここまで静観していたユナはまさか自国の準男爵が絡んでいたとは思わず微妙な心境で見守っていたが、こっそり収納から睡眠薬の瓶を四本出し縛り上げられている四人にぶっ掛けた。
睡眠薬は即効性で掛けられてすぐ三人はバタンと地面に倒れイビキをかき始める。
「中々認めそうも無かったから連れて行ってからの方が良いかなって思って。聞かれたくない話もあるし……」
「確かに。時間が無駄になりそうだったので助かったわ。」
「お気になさらず。貴女達は教会の裁判官ですね?」
「…よくご存知のようで。」
教会はどの国に対しても中立であり、非人道的な事を国境なく裁く権限を持っている。
裁判官はその執行人として働く者を指すが、その存在は市民には伏せられ一部の者しか知らないので三姉妹はユナが裁判官と言った事に警戒をした。
「落ち着いて話をしたいのでまずはコレら片付けましょう。」
ユナの提案にのり拘束した四人は逃げないように牢に入れ、更にユンギが氷の壁で覆う。
ヤンナは避難させた村人達を呼びに向かい、シンラは笛で鳥を呼び紙を括りて飛ばし仲間を呼んだ。
総てが片付くと三姉妹とユナとバーンは村人を避難させていた洞窟で話をする事にし、馬車は護送で使ったので徒歩移動した。
洞窟につくとユナはユンギに氷の壁で入口を塞いでもらい、こっそり防音の結界を張った。
「それで…あんたは何者だ?なんで裁判官の事を知っている?そしてなんで気づいた?」
ヤンナはユナを睨みつけながら剣をにぎる手に力を入れた。バーンも剣を握り臨戦態勢をとるがユナがそれを手で制する。
「順を追って話します。まず、この村に入ってから不審なことが多くありました。
武器に目もくれない見張りと老婆、見かけない村人など。
更に関しても魔法が使えたり敬語になる事があったりとどう見ても村人には思えなかった。そして決め手はあの令状、あれには教会のマークが入っていた。
裁判官の存在を知っていたから正解にたどり着いたのです。」
「なるほど…で?あんたの正体は?」
ユナはゆっくり変身の仮面に手をかけ仮面を外した。




