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再び戻ってきたでっぷりとした男は老婆を連れ大層機嫌が良さそうに戻ってきた。
「牢を開けな。」
「はい。」
老婆に従い見張りが牢を開けると顔を振りユナとバーンに出るように促す。
ユナとバーンがそれに従い牢からでると、でっぷりした男はユナを舐めまわすように上から下まで視線を這わせる。
「う~ん…悪くないな。やはり馬車の中で楽しむか。」
ユナは嫌悪感を抱きながらも何とか自制して大人しくしている。見張りは槍を向けながら歩くように促し、ユナとバーンはただ従う。馬車につくとバーンは馬車の御者席の足元に座らされ、まるでその為にあるかのような位置にあるポールに括り付けられた。
「お前は馬車の中だ。た~ぷり、可愛がってやるからな。」
(ああ…気持ち悪い。そろそろ限界だな…。)
ユナが縛られてる演技をやめて男を蹴り倒す事にしたその時、馬車の扉が勢い良く開き扉の前にいたでっぷりとした男は吹っ飛ばされた。
「あ゛~きっもちわっるいっ!マジで無理だからっ!!」
馬車の中からは大剣を担いだ野性味あふれる格好の女性が降りてでっぷりとした男をゴミのような目でみている。
ユナは呆気に取られながらも女性のワイルドすぎる格好に赤面していた。
「あ、貴女下着で歩いてるの?!」
「はぁ?!ちゃんと着てんだろ?」
チューブトップにデニムのショートパンツ姿でお腹と足をまるまる露出した姿はユナにとっては下着姿も同然だった。
文化の違いを受け入れられないユナは何かを察知してそっとバーンの方へ視線を向ける。すると、案の定ニヤニヤと女性を眺めるバーンと目が合う。
「ご、誤解だ!これは罠だっ!!」
「んぁ?痴話喧嘩は後にしなっ。まずは変態達を片付ける。」
「ち、痴話喧嘩じゃないわっ!」
ユナの言葉は聞かずに女性は老婆の目の前に一瞬で移動するとその腹を切りつけ、その後に続けて見張りとでっぷりした男の腹も切る。
三人共悲鳴をあげながら腹を抑えのたうち回るがその腹からは血は出ていない。
「切られたのに血が出て無い?」
「ヤンナお姉ちゃんは激痛を与えただけ。」
いつの間にかユナの隣にいたユンギは縛るのを手伝って欲しいと持っていたロープをユナに差し出した。
三人を縛り終わると、馬車の影でドサッと音がして馬車の影からメイドが御者らしき男を担いで出てくる。
「ヤン姉さん詰めが甘いのよね。逃げようとしてたわ。」
「悪ぃ。」
「シンラお姉ちゃん…早かったね。」
ユンギにお姉ちゃんと呼ばれた二人はユンギと同じルビーオレンジ色の髪に真っ黒な瞳を持っているので確かに血縁者のようだったが、雰囲気も服装も真逆だ。
「ユンギ、無事そうで良かったわ。」
シンラに頭を撫でられユンギは嬉しそうに笑った。年相応のその姿に皆がホッコリしていると、痛みから復活してきた拘束した三人が騒ぎ出し和んだ空気は消し去られた。
「ユンギ!今すぐ解けぇ!!」
「この私にこんな扱い許されると思うなっ!このっ!!」
シンラは懐から一枚の紙を取り出すと騒ぐ三人に向けてそれを見せつける。
「ガラガ王国のアブカタマリーラ準男爵、人身売買等の罪で令状が出てます。」




