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生意気な視線を向けてくるパートナーの頭をバーンは乱暴に撫でる。合間にもれる抗議の声は無視して気が済むまで撫でまわすとバーンは得意気な顔でユナを見据えた。
「ベテラン冒険者を舐めるなよ?捕まった時からすでにおかしかった。
余所者の俺たちを拘束した後、奴らは荷物どころか武器も奪わなかった。まるで武器が見えていないかのように視線すら向けていない。
次に昼間にも関わらず村人が全然居ない。今まで婆さん、ユンギ、見張りしか見ていないのは異常だ。しかも三人共平然としてやがる。
最後にユンギだ。こんな村で氷の壁が作れる子供がいるとかありえないだろ。」
バーンの自信満々の回答にユナは少しムスッとして口を尖らせる。あまりにも可愛いその顔にバーンは思わず身動ぎもせずに頬を染めた。
「さっきの差し引いて五十点!」
「差し引かれ過ぎてないか?!」
ユナは内心バーンに拍手をしていたがバーンの反応が面白かったので少しの間バーンで遊んだ。
「さて、バーンで遊ぶのも飽きたから
話を進めましょう。」
「俺の扱い…」
「まずこの村には認識阻害がかけられてるわ。村の周りを囲むように起点となる物が設置されてるみたい。武器を気にしないのも村人の有無が気にならないのもそれのせいかな。
この村の中には三人しかいない。だけど村から離れた場所でたくさんの人の気配がしてるわ。
そしてユンギ…」
ユナは少し考え込みいつもより真剣で真面目な顔をバーンに向けた。その様子にバーンは息を飲みユナの言葉を待つ。
「たぶん彼女はこの村の子じゃない。私の予想が正しければ私達は大人しくしていた方が賢明ね。」
ユナからみてユンギには氷の壁を使える以外にも不可解な点がたくさんあった。
たまに混ざる敬語、見張りを眠らせた薬、魔法もきかないと言われたのに穴が隠されていた牢の壁、優秀すぎる姉妹など不可解だらけだ。きっと明後日にはスッキリする事が出来るかもしれないが、バーンには大人しくしていた方が賢明と言いながらもこのまま何もしないのはユナとしては少し面白くない。
しかしここで見張りが起きてしまいユナとバーンは慌てて寝たフリをした。
「んがっ?!やっべぇ俺寝てた!!」
慌てて牢の中を確認した見張りは何事もない様子に安心しながら欠伸をする。その後は見張りが眠ることは無く朝日が顔を出した。




