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ユナとバーンは依頼品の納入と達成報告の為に数日かけてベベルの近くまで戻ってきた。
道中にハルバートとやり取りをして捜索隊がすでにアルベール国に入国している事を確認しているので、ユナは街には入らず仮面をつけてベベルを出た日に野宿した場所で結界を張って付与の練習をしてバーンが一人でギルドに行く事になっている。
「絶対に結界から出るなよ!何かあったらすぐ連絡しろよ!!」
「何もないから大丈夫。心配しすぎ!」
「ユナは自分の巻き込まれ体質を理解してるのか?!やっぱりじぃさんの所に…」
「サッサとギルド行ってきて!」
酷く心配するバーンだったが埒が明かないとユナは結界を張りバーンを追い出した。本当はこのやりとりが少し嬉しいユナだったが、だからといって続けていたら日が暮れてしまう。
バーンが遠ざかるのを見送り付与の本を読み始めた。
暫く本を読んだ後、ユナは収納から小ぶりのアメジストがついたペンダントを取り出す。
「…カバン二つ分くらいかな。」
作ろうとしているのは魔法を使えない時の為の収納付きペンダントなので適度な収納にしなければ人前では使えない。一般常識には疎めのユナだが城から出て少しずつ常識を身につけ始めている。
しかし、まだまだ足りないのでカバン二つ分であっても収納付きペンダントなんて代物を一般市民が持てるものでは無い事は分かっていなかった。
そうして出来上がった希少なペンダントにユナは食料と少しの着替えとお金を入れて自身の首にかける。
「完璧ね!」
思い通りの物が出来上がり満足気にしていると、耳に微かに叫び声が聞こえた気がしてユナは辺りを見渡した。
目に見える範囲には誰もいないようだが周囲を魔法を使って探索してみると三匹程の魔獣の反応と近くに人の反応がある。
襲われていたら大変なのでユナは靴の力で木の上に登ると近い木に飛び移りながら反応のあった場所を目指した。
目的の場所に着くと、ユナは来てしまった事を酷く後悔する事になった。狼の魔獣が取り囲んでいたのは短めの金色の髪に青い瞳の見知った顔の青年で、ユナはバーンに怒られる自分を想像しながらイヤーカフを操作する。
「どうした?!」
「わざとじゃないの。何故か捜索隊の代表っぽい人物と遭遇しちゃった…」
「はああああ?!」




