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「可愛さ余って憎さ百倍とはこの事。変なもの呼んだ貴方を許さないわ!」
「いや……むしろちょっかい出したの俺たちだから。」
ホームステイがいなくなりハイになっているユナは若干キャラ崩壊を起こしつつフワモコロンを睨みつけ指を指した。しかしフワモコロンは勝ち目がない事を察したのか、ピヨッと可愛らしく鳴き瞳の色を戻しオーラも消すと逃亡を計った。
「逃がさないわよ。」
洞窟の中に逃げ込もうとするフワモコロンの足を蔓で拘束すると逆さに吊るしてユナはジリジリと距離を詰める。
フワモコロンはバタバタと羽を羽ばたかせるが状況は変えられない。
ユナが剣を抜き振り下ろそうとしたその時、上空からギョロロロロ~と聞き覚えのある鳴き声がした。その声が聞こえた直後、捕らえたフワモコロンがギョロロロロ~と鳴き返しユナは空を見上げて飛んでくるもう一体のフワモコロンを確認する。
「少し白っぽいな…あれはメスか。」
「メス?って事はこの子の番?」
「ん~かもしれないな。」
「ふ~ん……」
ユナは目の前のフワモコロンに剣を振り下ろし蔓を切った。
「いいのか?」
「…依頼内容は達成してるもの。」
地面にはフワモコロンが攻撃に使用した羽根が大量に落ちているので拾い集めれば依頼は余裕で達成出来る。
少しムスッとするユナの頭をバーンは大笑いしながら乱暴になでた。
ユナは迷惑そうにバーンの手を退けようと抵抗するがバーンはまったく気にしてない様子で、ユナは諦めて髪がボサボサになるのを受け入れた。
「俺、ユナのそういうところ大好きだわ。」
「…私はバーンのそういうところ嫌いじゃないけど迷惑ね。」
取り敢えず二人は地面に落ちる羽根を拾い集め、そのまま野営する事にした。
羽根は二枚だけで足りるがフワモコロンの羽根は高値で売れる上に弓矢やアクセサリー等汎用性があるのでできる限り集めておく。
「さて、取り敢えず火を起こすかな。」
「じゃあ私はお風呂つくるわ。」
真っ先に風呂をつくるユナに苦笑しながらバーンは薪になる木と小動物を探しに行った。ユナは何だか既視感をおぼえて風呂の周りにユナしか通れない不可視の結界を張った。
ホームステイを閉じ込めた辺りから大きく外れた場所につくった風呂に早速つかりながらユナは無性にドーラに会いたくなった。




