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「分かった。」
バーンが素直に跳び退くと直後、ビッグゲジーの上半分が水球に包まれた。
ユナにビッグゲジーには水が効かない事を伝えようとバーンが口を開くと同時に辺りに蒸気がたち込みバーンはその暑さに更に後ろに飛び退いた。
「アッチッ!」
自分への配慮の無さにバーンはユナに文句を言いたいところだが蒸気で視界が悪く状態把握ができない。
自分の魔法なのだからユナは無事だろうがビッグゲジーがどうなっているのか早く確認したいがバーンはまるでサウナのようなこの空間に長く留まるのは無理だと判断した。
「ユナ!入口方面に撤退だ!!」
ユナからの返事は無かったが、すぐに足音がして蒸気の中から走って来るユナの姿を確認したバーンはホッと息を吐いた。
「無事で安心した。」
「自分の魔法でやられたりしないわよ。」
「だろうとは思ってはいたけどな。てか、コレはやり過ぎだろ。」
バーンはユナの頭を小突いて反省するようにと注意した。
蒸気がおさまってくるとジメジメした空間の中にフワモコロンの巣とすっかり茹で上がったビッグゲジーが現れた。
ビッグゲジーは防具の素材になるほど丈夫だが、茹で上がったその外皮はふにゃふにゃで素材としては使えそうもない。
「冒険者なんだから素材をダメにするんじゃなくて傷つけない技術を身につけようぜ。」
「…返す言葉もないわ。」
洞窟内はジメジメ水浸しでとても待機していられる状態じゃない為、二人は入口でフワモコロンを捕獲する事にした。
道中またアイスホライモリの氷漬けを回避し、バーンが誤って洞窟オオコウモリを松明で焦がし襲撃されながらも入口に戻ってきた二人は入口を塞ぐように蜘蛛の巣の様な罠を貼り少し洞窟から離れ休憩した。
「私…この洞窟がトラウマになりそう…」
「こんなん冒険者やってたら日常だぞ。ここから先の話を先にしておくと罠にかかるとフワモコロンは激怒して襲いかかって来るだろから最初に結界を張ってくれ。」
「罠にかかったら動けないんじゃないの?」
「良くて動きを鈍らせる、悪くて数十秒の足止め位だな。」
ユナは確認の為に収納から本を取り出しフワモコロンのページを開いた。説明にはやはり穏やかな性格で襲って来る事は滅多に無いと書かれている。
「警戒しすぎじゃない?」
「時には本での知識が役に立たない事もあるんだよ。」
自信満々のバーンを少し疑いながらもユナは本を収納にしまいフワモコロンが戻るのを待った。
一時間程して待ちに待ったフワモコロンの姿が見えるとユナと
バーンは警戒を強めた。




