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ユナとバーンは順調に進み街を出てから6日でグル鉱山の麓に到着した。
目的の洞窟は山頂の少し下にあり、洞窟の中は魔物も多いので通常は山肌の少し平になっている場所で休む。
「結界貼れば安全でしょ。」
ユナの伝家の宝刀により洞窟だろうが山肌だろうが寝るのに快適そうな場所で寝る事にし、二人は山を登り始めた。
「山の半分までは緩やかな傾斜だから…ユナさん?」
バーンは後ろを歩くはずのユナを振り返り目を丸くした。ユナはバーンの後ろを歩いてなどいなかった。低空飛行で付いてきていたのだ。
「前にハルバートが空を飛べる靴の話していたでしょ?ちょっと作ってみたの。初心者講習で山登りの注意とかたくさん聞いたけどこれなら魔法じゃないし楽だし良いでしょ。」
確かに傾斜を登り続けるのは筋力的にキツくペース配分も難しい。しかしそれらを乗り越え冒険者は逞しくなっていくのだが、ユナは別の方向で逞しくなっている。
「…その靴、俺も欲しいな。」
「靴をくれるなら一日で作ってあげる。」
本当は今欲しいが生憎と靴のストックは持っておらず、今履いているものを脱いで渡すのは気が引ける。バーンは街に戻ったらすぐに靴を買いに行く事を心に決めてまた歩を進め始めた。
ユナが飛んで付いてきていたのでバーンは自分のペースで登ることができ、一日で山の三分の一程まで登ることができた。
「明日には洞窟まで行けそうだから入口で休んで奥に行こう。」
「フワモコロンはどの辺にいるの?」
「最奥だな。フワモコロンは頭の良い鳥で自分の巣を魔物に護らせるんだよ。巣には魔物が嫌がる臭いのするものが使われてて外から戻る時に小動物を狩って供物にするんだ。」
「本当に賢いわね。」
本にはそこまで書かれていなかったので素直にバーンの知識に関心したがユナはそれをバーンには伝えない。
普通にしていた方が余っ程好感度が上がっていくバーンはそんな事もしらずに知らずに、夕食のスープを作りながら洞窟内での注意等を説明していった。その途中、キーンと金属音が響き二人はイヤーカフを操作する。
「ユナ様、バーン様、聴こえておりますか?」
「ハルバート大丈夫よ。」
「実は本日、ガルガ王国より手紙が届きました。内容は王女殿下捜索隊の入国許可です。」
ハルバートの報告を頭が痛くなる思いできいたユナとバーンは互いに顔を見合せた。




