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「殿下が大変失礼致しました。」
ハルバートの登場でグロースライダーがやっと静かになりユナとバーンはホッとした。
どうやらグロースライダーはイヤーカフをずっと着けてユナが気がつくのをずっと待っていたようで、グロースライダーが騒ぎ始めたのでハルバートが察してグロースライダーの耳からイヤーカフを取った。
今頃ハルバートの横でグロースライダーが騒いでいるだろうが是非とも強い心を持ってほしい。
「こんな連絡手段が必要な程に間者がいるの?」
「お恥ずかしながら…大体の目星はついております。ただいま泳がせているところです。」
ハルバートの話では仕組みを作らせた者はいるが何に付与するか等は知らないし、付与自体はハルバートが行った為イヤーカフについては四人しか存在は知らないという。
ハルバートの万能さをユナが褒めるとバーンは「なんと言う無自覚…」とユナをジト目でみた。
「必要な情報は私の方からお知らせしますのでどうぞ気軽にお聞き下さい。」
「じゃあその殿下を大人しくさせる方法は?」
「ユリアーナ?!」
「殿下を大人しくする事は出来かねますが、イヤーカフのサイレント切替え等の機能はございますので詳しくは説明書きをご覧下さい。」
優秀なハルバートは先読みして必要な機能と説明書きを用意していたようで、ユナはハルバートに言われるまま手紙とイヤーカフの入っていた封筒を開き火に炙った。
「すごーい!」
「炙り出しとは古風だな。」
「案外こういうものの方がバレにくいのです。」
イヤーカフはオフの状態で着ければ起動。一度叩くとサイレント切替えで通信は出来ないが相手が話したがっているのがキーンという金属音で通知されるようだ。
通信相手も選べるようで耳の縁にそのまま着ければ全員、着けて下げるとユナとバーンのペアとグロースライダーとハルバートのペア、着けて上げればハルバートに繋がる。
「一つ足らないようだが?」
「「「お気になさらず。」」」
ユナとバーンは帰る時にまた連絡するとハルバートに伝えイヤーカフを下げサイレントに切り替えた。
「便利なものもらったな。」
「そうね。ハルバートには感謝しなくちゃ。」
食事が終わると、ユナは今度こそ付与の本を読み始めた。
暇になったバーンがユナに風呂の利用許可を求めると、ユナは湯を魔法で清めてぬるくなっていたお湯を温めた。
「…ありがとう…」




