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「大っ変、申し訳ございませんでした。」
地面に額をつけて謝るバーンをユナは睨みつける。
涙目で頬を膨らませるユナを内心可愛いなどと思っているバーンだがそんな事がバレれば更に怒りを買うので顔には出さない。
「バーンも結界に入れないようにするべきだった…」
「ちょっ!事故!事故だ!!まさかイノシシが結界通るとか思わないだろ?!」
「バーンが触れていたから一部と認定されたのっ!大体なんであんな事になるのよ!!」
バーンが結界を出て暫く歩くとあのイノシシの方から突っ込んできた。いくらベテラン冒険者といえど衝突されれば全身の骨にヒビが入る。
逃げて逃げて抱きついたところで先程の件に繋がったというのがバーンの説明だったが、ユナからしたら不甲斐ないの一言だ。
イノシシはユナがバーンと一緒に殴り飛ばしたのでのびている。仕方が無いのでイノシシの解体と調理をする事でこの件は水に流す事にした。
「…美味しい。」
「王女殿下のお口にあってようございました。」
「からかわないでよ。」
ユナはバーンの作った串焼きに舌鼓をうちながら付与の本を開いた。すると本の間から白い封筒が落ちる。拾って裏と表を確認するが何も書いていない。
封筒を開けてみると「困った時は連絡を」と書かれた紙とシルバーのイヤーカフが二つ入っていた。
「何だろ…」
ユナはとりあえず右耳に一つイヤーカフを着けてみた。するとイヤーカフが白い光を放ったかと思うとユナの耳にありえない声が聞こえてきた。
「酷いじゃないか!気絶している間に行ってしまうなんて。」
間違えようの無いグロースライダーの声にユナはそっとイヤーカフを外した。バーンが不思議そうな顔でユナを見たのでユナはバーンにもう一つのイヤーカフを渡す。
そしてそれを着けたバーンもまたすぐにイヤーカフを外した。
「どうするんだ…コレ……」
「捨てましょうか。」
二人は真剣に悩んだ。
捨てたところで何の影響もない。しかし、何となく捨てたら面倒な事になる気がする。そんな予感があった。
そんな抵抗が無駄な事は百も承知だが致し方がない事もある。
深いため息をつきながらも再びイヤーカフを装着すると予想通りの言葉が聞こえてきた。
「二人とも!これでも私は王族だよ!!憧れの存在だよ?!なんですぐに外してしまうのさ!!!」
「あー殿下すんません。」
「ちょっと頭痛がしまして…このまま失礼します。」
「塩対応!しょっぱすぎて泣きたい!!」




