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「まぁ…快適に過ごせるならいいか…」
バーンはユナに野営講義をするのを断念しガッタにもらった剣をどうするのかを聞いてみた。
もちろん付与をする気のユナだがガッタの剣を失敗作にしたくないので慎重に考えている。
「参考までにバーンならどんな剣が欲しい?」
「そうだな…なんでも透かして見える剣とかいいな。」
「…最低。」
「違っ!」
バーンはユナが何を想像したのかを的確に把握して全力で否定するがユナはバーンに疑惑の目を向ける。
下心が百パーセントなかったかと言えばユナに最低と言われ意識してしまったので今は無いと言い切れない。しかし最初に浮かんだ用途は違う。
「何でも透かして見えれば相手が隠してる武器とか分かるし隠れてる敵もちゃんと把握できるから便利だろ!」
バーンがユナの誤解を解くのに必死になっている間に少し陽が傾いてきたのでバーンは早めに野営地を探す事にした。
結界を張れば安全である事は分かるがそれでもより安全性が高い場所である事に越したことはないので少し道から外れて適度に隠れそうな場所を探す。
「ここなら良いか…」
良さげな場所を見つけたバーンはユナに結界を貼ってもらい木を一本切り椅子を作り、ユナは地面に穴を開け湯を注ぐと衝立をつくる。
「野営で最初に作るのが風呂って…」
呆れながら見ているバーンにユナは「覗いたらコロス…」と手で何かを握る動作をして脅しをかけた。バーンはその恐ろしい手つきに真っ青になり食材を探してくると言い残し逃亡した。
バーンが居なくなった事を確認したユナは変装を解き服を脱ぎ捨て湯に浸かる。
「ふぅ…」
湯の温かさに一気に力が抜けたユナは目を瞑りその温かさに身を委ねる。
襲撃されたり他国の城で毒を盛られたり今のところ散々な旅だがユナは城を出て良かったと心から思った。そして一人では無くバーンが一緒に居てくれる事が意外に救いになっている事実には蓋をしたくなった。
出会いは最低だが剣を教えてくれてユナの事情を知っても一緒に居てくれるバーンにユナは結構救われている。
「何でも透かして見える剣…かぁ……それっぽいものならできるかな……」
湯につかりながら構想をねるユナにはそれをプレゼントした時の嬉しそうなバーンの顔がしっかり浮かんでいる。
少し温まりすぎたのでユナが湯から立ち上がると、何かが勢いよく衝立に激突し破壊した。
「なに?!」
ユナは激突したものを見て一時停止した。
バキバキに壊れた衝立、そこにめり込むイノシシ、そのイノシシに抱きつくバーン…。
「痛ててて……このイノシシ暴れすぎだろ…」
バーンは打ち付けた身体の痛みに耐えながら立ち上がり振り返ってしまった。そして凝視してしまった…己の女神を。
「ヘンターイ!!!!!!!!!」
バーンはイノシシと共にユナの魔法で飛ばされていった。
「我が人生に一遍の悔いなし…」
そう言い残して飛ばされていった。




