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フラインゲティッシュ元公爵令嬢、レベッカが囚われて二日後、フラインゲティッシュ元公爵はレベッカを勘当した。
たった一通の手紙でその事実を知らされたレベッカだったが親に捨てられた事への絶望の色はなく、何事も無かったかのように平然としていた。
貴族としての地位が無くなったレベッカは貴族用の牢から一般牢に移される事になったが、それにも動揺はみられなかった。
「ここで暫く過ごしてもらう。」
兵に連れられて一般牢に入ったが、泣き叫ぶ訳でもなくただただ自身の指にはまる指輪を愛おしいそうになでる姿に兵は少し同情した。
そして一日後、今現在レベッカは牢から連れて来られ城の別棟にある裁きの部屋で檻に入れられハルバートに毒を飲まされている。
「ガッ…」
レベッカは汚れた床の上に倒れ込んだ。
グロースライダー、ユナ、バーン、ハルバートが見守る中、檻に入れられたレベッカは以前自分が他人に使用していた毒に苦しめられる。
喉が焼けるように熱く呼吸もしずらい。
「まだ始めたばかりですよ。そんな死にそうな顔をしないで下さい。致死量を与えた訳では無いのですから。」
ハルバートはレベッカを近くで観察しながら解毒薬を飲ませるタイミングを計っていた。
レベッカは苦しみながらもグロースライダーから視線をそらさないのでグロースライダーはとても気まずそうだ。
「そろそろ解毒してくれ。」
「分かりました。」
ハルバートがレベッカの口に解毒薬を流し込むと暫くして苦しむ様子が無くなった。
「毒を盛られる気持ちは分かって貰えましたか?」
「……」
「レベッカ嬢、謝罪の言葉等があれば聞こう。」
「名前……私の名前を初めて呼んで下さいましたね…私は後悔などしておりません。殿下の側にいる為の努力をしただけですもの。」
虚ろな瞳でグロースライダーを見詰めながらレベッカは懺悔も助けを求める事もしない。
グロースライダーとしては被害者への謝罪を期待していたので残念でならなかった。
グロースライダーがユナに視線を送るとユナは金色の腕輪を取り出しハルバートに渡した。
受け取ったハルバートはレベッカに近づきそれを右腕にはめようとする。
「触らないで!そんなモノ付けません!!私はこの殿下からの指輪しか身に付けません。私を支配するのは殿下だけです。」
レベッカは自身の指輪を愛おしそうに撫でた後、グロースライダーの右手に視線を向けた。
「……指輪が…ない…」




