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カチッと音をさせたブローチはエメラルドの真ん中から細く光を発し、やがてその上に少しずつ映像が浮かび上がる。

段々鮮明になった映像はユナが襲われた時のものでグロースライダーは途中でまたピンの部分をカチッと回す。

すると今度は椅子に座る公爵令嬢の姿が映し出された。


「やめて!!」


先程までとは打って変わり焦った様子の公爵令嬢を無視して再生された映像に皆が注目する。


「また…殿下の周りを飛びまわるゴミ虫が発生したみたい。今度はいつもよりもご執心のご様子で私……我慢がならないわ!今までのように少し辱めるだけなど生温い!!私を差し置いて近づくゴミ虫など心身共に苦しめて苦しめてゴミ箱に捨てなくては!!……その結果壊れてしまっても家の力で何とでもできますし…やれますね?」


狂気の笑みを浮かべる公爵令嬢の姿にその場にいた皆が恐怖を覚えた。映像からも微かに震えながら了承する声が聞こえる。

公爵令嬢はその場に力なく座り込み、公爵は「私は知らなかった」とブツブツと繰り返す。


「あ、貴女のせいよ!殿下の前でこんな醜態を晒したのは貴女の様な卑しい者が近づくから!!」


ユナを睨みつけながら叫ぶ公爵令嬢に先程までの気品はなく、ユナは自業自得でしょと思いながらもただポカンとしていた。


ユナの隣でバーンも目の前で起こっている事態に女性恐怖症になりそうにな程の恐怖を感じていたが、高ランク冒険者としての経験値が危険を察知し周りを伺っていた。


(なんだ…)


直後、ユナを睨みつけていた公爵令嬢がユナに向けて小瓶を投げつけた。バーンは咄嗟にユナに覆いかぶさり公爵令嬢が投げつけた小瓶が背中に当たる。すると中に入っていた液体はバーンの背中を濡らし煙を出しながら服を溶かした。


「クッ……」


「バーン!!」


ユナはバーンの腕の中から抜け出しバーンの背中を確認する。服が溶け皮膚も赤くなり少し爛れているが幸い皮膚は溶けていないようだった。


「直ぐに治さないと!」


「まて!今は不味い…大丈夫だから。」


確かに身分を隠しているユナが魔法を使えば身バレする可能性が高まってしまう。しかしそんな事を言っている場合では無いのでユナは構わずに回復の魔法をかける。

咄嗟のことで動けなかったグロースライダーは悔しい思いをしながらもハルバートに公爵令嬢の拘束を命じ公爵からも目を離さずに牽制する。


「邪魔をしないでっ!」


ハルバートが近寄っていくと公爵令嬢は小瓶を突き出し近づかないように威嚇する。ハルバートはあまり手荒にする事もできないので手を出すのを躊躇った。

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