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与えられた部屋でユナは久しぶりのフカフカベッドにダイブなんて事はせずに収納から出したグロースライダーから取り上げた書類の一部を読んでいた。
ハルバートは優秀でガルガ王国の要人について細かく調べていた。
その中にはもちろん王族も含まれ、ユナは兄と弟の出来の悪さに国の行先を心配してしまった。
「私ってもしかして貰われてきた子なんじゃ…。」
ユナと家族との共通点は王族である事位のように思われる。顔立ちが似ているかと言われればあまり似ていないし瞳の色も違う。髪色は父王の金髪と王妃の白が混ざった結果かもしれないがあまりにも共通点が無い。
「考えても仕方の無い事ね。」
ユナは考えを放棄し再び書類に目を通した。国から離れた今、ハルバートの書類はとても貴重な情報源だ。自分のルーツの心配なんかより今後どうするのか考えなくてはならない。
必死に考えを巡らせながらユナは書類をめくった。
同じ頃、バーンはフワフワのベッドにダイブして豪華な部屋に泊まれる幸運を噛み締めていた。
「今までのどんな宿より気持ちいい。流石王子様だな~。」
バーンは大きく伸びをして今日の出来事を思い出す。ユナが実は王女でその王女を王子が迎えに来た。これだけ聞けば物語の世界だろう。
現実の王女様は意外に粗暴で王子様はストーカーだ。これでは子供が夢をみる事は不可能だろう。バーンは夢の大切さを学んだ気がした。
「これからどうするかな~。」
自分もユナも追われる身だが追って来る者の規模が違う。
自分だけなら諦めさせるのは容易だがユナは根が深すぎる。その内諦めてくれる可能性も低い。
本当なら別行動をとるべきところだという事は充分分かってはいるが惚れた弱みか見捨てる気にはならない。
「ちょっとユナの気持ち聞いてくるか……」
ベッドから起き上がったバーンはユナの部屋に行こうとドアに手をかけた。しかし、ドアには鍵がかかっており出ることは出来ない。
「おい!誰かいないか!!ちょっと出たいんだけど!!!」
外に向けて大声で呼びかけるが反応はない。
苛立ちながらドアをガチャガチャと揺らすが鍵が開くはずもなく、破壊する訳にもいかないので力一杯蹴ることもできない出来ない。
「あんのクソ王子~!!」
どうすることも出来ないバーンは乱暴にベッドに寝転がると明日どうやって王子をいたぶってやろうかと考えながらそのままふて寝した。




