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「つまり、貴方は殿下の側近としてここにある資料全て集めてきた張本人という事で良いかしら。」
「その通りにございます。ユリアーナ様。」
「今の私はユナよ。様付も必要ないわ。」
「ユナ様、呼び捨てにすれば私は主に殺されます。」
ユナが視線のみグロースライダーに向けると、言葉にはしないがハルバートがユナと会話している事に嫉妬している様子が見て取れた。
確かにこの様子だとハルバートがユナを呼び捨てにした瞬間に腰の剣を抜きそうだ。仕方がないので呼び方を容認し話を進める。
「私、ハルバートの姿を城で見た事なかったわ。何か魔法を使ってたの?」
「いいえ、私が使っていたのは着用した者の姿を隠すコートです。流石に一人で行動すると怖い番犬に気配でバレるので人に着いて入り着く人を変えながら情報収集しておりました。」
「まさか着替えやお風呂…「見てません!覗いてません!!」」
「お前!それでも男か!!」
馬鹿な言葉を口走ったバーンを処理して股を押え震えるグロースライダーとハルバートと話を続けると自分が住んでいた国の重要な情報は全て筒抜けだった事が分かった。きっと戦争になれば大敗だろうと思われる。
「私が城を出た後も城に?」
「ユナ様は直ぐにバーンさんと行動を共にしていましたので殿下に伝えて私は城に戻りました。そして今日戻るよう言われここにおります。」
「今日?貴方は空が飛べるの?」
「この靴を履いている時のみ可能です。」
「本当に、この国では魔法はいらないわね。」
ユナは便利な道具で溢れるアルベール国に感心しながらもハルバートに城の様子を尋ねると事態は思っていたより酷いものだった。
ガラガ王国では大きな魔法が発動出来なくなり魔物被害が増えているらしい。
国民には不可解な現象として調査中とされているが、実際は核の魔力が底を尽きかけている事が原因で王と王子二人が必死になって供給するが全く足りないようだ。
ガラガ王国は王族の男性が核を魔力で満たす事で個人負担の魔力を減らし魔法を発動しやすくしていたらしく、核が魔力で満たされなければこの現象は解決されない。
王も二人の王子も魔力の量は多くないようで焼け石に水状態。
その為今現在ガラガ王国の全力をもってユナを探しているらしい。
「もう公表してしまえば良いのに。」
「それガラガ王国じゃなくてガラガ国になっちゃうだろ。」
「自業自得でしょ。こんな完璧な存在のユリアーナを蔑ろにするから。」
「ユナ様はガラガ王国では攫われた事になっておりますので恐らく我が国にも間者がいるかと思われます。」




