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紙から発せられた声は青年のようだった。
爽やかなその声にユナは顔を真っ青にして頭を抱えている。
「なんだ?魔法か?」
「なんだ知らんのか。これは設置型魔法陣だ。魔法陣に触れる事で発動するんだが発動条件は書いた本人が決められるって代物でな、アルベールじゃあよく手紙に使われてるな。」
「ほーう…んで、なんでその発動条件にユナちゃんが組み込まれてるのかな?」
ニッコリと微笑むバーンは紙を拾い書かれている内容を確認した。
そこにはユナソックリの絵姿と共に簡単なプロフィールも書かれている。
「えーっと?ガラガ王国の第一王女、ユリアーナ様……?ん??おっかしいなー。ユナはブルベン王国出身って言ってたよな。」
「えっとぉ…。」
「ちょっと二人でお話しようか。」
ユナは観念して全ての事情を話す事にした。
流石にガッタにもという訳にはいかないのでユナ宛ての客人が来たら待って貰うように伝え奥の個室を借りる。
部屋に入ると防音の結界とドアを開かなくした。
「で、ちゃんと説明してくれる?」
「嘘ついてごめんなさい。私の本当の名前はユリアーナ・ガラガ、ガラガ王国の第一王女です。」
「つまりは今まで聞いていた話は作り話で、俺は王女様の家出に付き合わされていたのか。」
「作り話じゃないよ。ガラガ王国の王族はね、男しか認められないの。女が産まれたらその場で殺される…私はたくさんの幸運が重なって生かされたけど、それも尽きたから逃げた。もし信じられないなら今からくる人に聞いてみるといいよ。」
「いや、言い過ぎた。信じるよ。ただこれからは嘘はつかないで欲しい。俺たち運命共同体だろ?」
バーンは俯くユナの頭をポンポンとしてニカッと笑った。
ユナとしては何故こんなにも自分を信じてくれるのか不思議でならなかった。ふとバーンの告白を信じても良いのかもしれないと過ぎったが、ユナはそれを両手で振り払い結界を解きドアを開けた。
「……流石に早いな…。」
ユナは進行方向にいる身なりの良い青年をみて呟いた。
その奥には曲がった腰を限界までのばして立っているガッタが見える。青年はユナに近づくと片膝を付き勝手にユナの右手をとり口付け微笑んだ。
「その姿は魔法かな?」
「……人違いとは思わないのですか?」
「心外だな、僕が君を間違えるはずが無いじゃないか。立ち姿、歩き方、喋る声、全てが本物だと証明してくれているじゃないか。」
「…相変わらずですね。グロースライダー殿下。」




