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目的地に着き、バーンの足が止まるとユナは握られていた手を振りほどき赤い顔を見られない様に俯いた。
バーンはユナの様子に気づいてはいたが、ここでからかえば本気の怒りを買うのでニヤける顔を叱咤し目の前の扉をノックした。
「じぃさんいるか~?」
大きめの声でバーンが中に呼びかけると中から物音がし、少しして扉が開くと腰の曲がったスキンヘッドの老人が現れる。
「じぃさんまだお迎えは来てなかったか!」
「まだまだ現役じゃわい!坊こそ、女連れとは大人になったじゃないか。」
「坊言うなし!未来の嫁を見せに来てやったんだ。有難く思えよ?」
「ほう…。」
老人はユナに目をやり、まるで見定めるような視線を向けた。ユナには慣れた視線だったので物怖じせずその目を強く見返す。
「ユナです。バーンの未来の嫁では無く冒険仲間です。」
「ふむ。中々難儀な人生を送ってきたようだな。儂はガッタ、鍛冶師をしておる。」
「ガッタさん、宜しくお願いします。」
「立ち話も何じゃい。中に入れ!」
バーンとユナはガッタに言われ家の中に入ると、部屋は少し薄暗く雑多としている。どうやら一人暮らしのようでテーブルには一人分の使用済の皿が放置されていた。
「適当にかけてくれ。」
ガッタに言われ端にあるスツールに座ったユナは初めての庶民的な家に落ち着かない様子で周りを見渡した。
バーンは椅子には座らず腰から剣を外すとガッタに渡しメンテナンスの依頼をする。剣を鞘から抜き刃を確認したガッタはため息混じりで剣も自分も酷使されると嘆いた。
「嬢ちゃんの剣はいいのか?」
「まだ駆け出しの初心者にじぃさんの剣は荷が重いだろ。」
「ふむ。そうか……。」
「暫く滞在予定だから適当にくるわ!ユナ、宿を探しに行こう。」
ユナが頷き立ち上がるとガッタが出て行こうとする二人を呼び止めた。
「宿が決まってないならここに泊まれば良い。」
「ん?どうしたんだ?そんな事初めて言われたな。」
「王子様の初恋の君が行方不明で騒がしいんだよ。新規の宿泊客は自ら確認に来てそのまま依頼もしていくらしい。」
「そりゃあ面倒だな…。」
「そこにも絵姿があるよ。一軒一軒置いてくんだ。」
ガッタが指さす先にこの場に似つかわしい上等な紙が一枚置かれていた。バーンはそれを手に取ろうとしたが、ユナがそれよりも早く紙を手にした瞬間、紙に魔法陣が浮かび光りだす。
「しまった!!」
ユナは自分の失態に頭を抱えた。
手が離れた紙は床に落ちても尚魔法陣を光らせている。バーンとガッタは訳が分からずただ呆然としていた。
「み~つけた。」
紙から一言だけ声がした。




