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「ヘレンさん!どうしてココに?!」
「私達の部屋は一階だから騒ぎで起きたんだよ。私は戦えないから静かになるのを待ってここに来たんだけど……すまなかったね。」
ユナに申し訳なさそうに謝罪するヘレンだが、ユナはむしろ部屋を荒らした事や夜中に起こしてしまった事に対しての罪悪感に押しつぶされそうだった。
「気にしないで下さい!ヘレンさんが巻き込まれなくて良かったです。カレンも起きてるんですか?」
「あの子も起きてるよ。私に何かあれば騎士団に駆け込むように言ってある。」
「本当にごめんなさい!ここの片付けは私達がしますので二人は寝てて下さい。」
ヘレンの背中を押して部屋から追い出すとユナは魔法で足跡を消し壊れた窓の修復をした。一瞬で片付いた部屋は以前よりも少し綺麗にみえる。
「本当に魔法って便利だよな。なんで俺は使えないんだろ。」
「便利だけど危険でもあるんだよ。それよりも夜明けまで後四時間くらいあるから仮眠をとろう。」
片付けた部屋を後にしてバーンの部屋で仮眠し夜を明かした二人はヘレンに書き置きして起こさないようにそっと宿を出た。
霧が立ちこめる中、ユナとバーンは門に向かった。まだ閉じられていたが門番に話をして小さな扉から外に出ると直ぐに森に入りユナは遮音と不可視の結界を張る。
「ここで変装して行きましょ。」
ユナは収納から前に変装に使用した帽子を取り出すと髪が帽子にスッポリ入るようにまとめそれらを身につけた。
「眼鏡はしないのか?」
「戦闘時に不便だから今回は使わないよ。その代わりコレを使うわ。」
ユナは再度収納から顔の上半分を覆う白い仮面を取り出した。
流石にそんな目立つ物を付けたら変装にならないとバーンは止めようとするが、仮面を装着後のユナの顔にはあるはずの仮面は無く、変わりにおっとりした印象の可愛い少女の顔がそこにあった。
「……ダレ。」
「素晴らしい変装でしょ?」
得意げなユナに対してバーンは微妙な顔をした。何処かまずい場所があるのかと自分の顔をペタペタさわるユナにバーンは耳元まで顔を寄せる。
「俺と二人きりの時はその仮面禁止な。」
「心配しなくてもずっと装着してても何も問題はないよ。」
「問題なら大ありだ。好きな女の素顔が見れないなんて何て拷問だよ。」
バーンの恥ずかしすぎるセリフにユナは口をパクパクさせるだけだった。思いっきりツッコミを入れたいのに上手く言葉が出てこない。
かなり動揺したせいで結界が解除されたがユナは少しの間その事に気づかなかった。




