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王宮を出たユリアーナは門番から見えない所まで来るとすぐに物陰に入り瞬間移動した。
そう、ユリアーナは魔力を奪われなかった。
実は儀式はびっくりするくらい適当で監視員は司祭一人だけ。
「核に触れば魔力が吸われ白く光るから立てなくなるまで触るように。」
それだけ言うと司祭は扉の前で立っていた。
つまり、限界だと思った時点で倒れてしまえば良いのだ。
この儀式に向けてたくさんの準備をしたユリアーナは魔力を感知されないようにするにはどうすれば良いのか、自然に怪我なく倒れるにはどうすれば良いのかとても考えたのに凄く無駄な事だったと愕然とした。
恐る恐る核に触れた核は、眩しい程輝いた。
ユリアーナは直ぐに手を離して幻影に切り替えたが、一瞬しか触れていないのに疲労感がありびっくりする。
適度なところで崩れ落ちてみせ限界を主張すると司祭には気づかれずアッサリ了承された。
その後すんなり王宮を出られたユリアーナは内心ガッツポーズをした。
物陰に隠れるとまずは白銀の髪は漆黒に染め瑠璃色の瞳はブラウンに変えた。
腰まである髪を切りたかったが、ハサミも無い為三つ編みしお団子にする事で印象を変えた。
後は服だが物陰とはいえ脱ぐのに抵抗があった為仕方なく白からブルーに色を変えるに留めた。
どこからどう見てもユリアーナと気づかれない姿になるとユリアーナは隠していた旅行バッグを握りしめバレない内に王都から出る為に乗合馬車に乗った。
一方、ユリアーナが、去った王宮では上機嫌の王妃が優雅にお茶を嗜んでいた。
自身が産んだ娘でありながらユリアーナの事を心底嫌っていた王妃はユリアーナが王宮から居なくなりとても喜んだ。
「私の子はルデウスとレイバンだけ。これでやっとあの子を至宝だなんて世迷いごとを言う連中も居なくなるわ。」
「母上、父上は私とレイバンのどちらを後継者に選んでくれるのでしょうか。」
「僕は兄上と争う気なんてないよ。爵位を貰って兄上の手伝いをしたいんだ。」
「まぁ、レイバンはなんて健気なんでしょう。大丈夫、父上はきっと貴方達の望む通りにしてくれるわ。これからも兄弟で助け合って生きていくのよ。」
二人の王子は誇らしげに頷いた。
すっかりユリアーナの存在など抜け落ちた三人は団欒を楽しみ、これからの輝かしい未来について語り合った。
頭を抱える司祭と怒りで震えている王の心も知らずに実現が困難な未来を夢みて優雅な時を過ごしていた。