18
ドラゴンへの手土産にドリリアンを取り準備万端で約束の日を迎えたユナは昼過ぎ、ドラゴンの宴が行われる場所へ出掛けようと部屋を出た。
すると、ドアの前には支度をしたバーンの姿があった。
「え?行かないって言ってなかった?」
「惚れた女を一人で行かせられる訳が無いだろ。」
「そんな危険は無いけど…ありがとう。」
二人は宿屋を出ると人気の無い路地に入った。バーンは何を勘違いしたのか若干頬を赤らめながらユナに抱きつこうとするが、ユナが結界を張りバーンを浮かせたので慌ててジタバタと藻掻く。
「普通にしてて大丈夫よ。落ちないし皆からは見えないようになってるから。」
「先に何するか言ってくれないか!」
バーンの抗議を無視してユナは自分にも結界を張り身体を浮かせるとそのまま上昇させる。もちろんバーンも上昇させ共に空の旅に入るが途中で失神してしまったのでユナは喋る相手も無くプカプカ移動しながらドラゴンの集会場を目指した。
森を抜けた山脈の一角に火山の噴火した跡か丸く平になっている部分がある。ユナはそこに降り立つとバーンも解放した。
気を失っていたバーンはユナの平手打ちで目を覚まし、さっきまでの景色との違いに驚きながらも高ランク冒険者の意地か直ぐに平静なフリをした。
「ここはどこだ?」
「ドラゴンの集会場の入口よ。」
「何もないみたいだが…?」
「こんな目立つ所で行われてたら人間は大パニックでしょ。」
ユナは地面に両手を向けると目を瞑り「開け~酒盛り!」と言った。するとユナを中心として光り出し段々と大きくなっていき、バーンは眩しさから目を瞑った。
「もう良いよ。」
ユナの声で目を開けたバーンは絶句した。
どこを見ても真っ白な世界。バーンは夢でも見ているのではないかと右頬をつねってみる。
「気持ちは分かるけど行くよ。」
何も無い真っ白な空間なのにユナは道でも見えているかのように迷いなく歩いた。バーンは置いてかれないようにキョロキョロとしながらもしっかりユナの後に続く。
段々と声が聞こえて来るようになり遠くに何かの影が見え始めた。
少しずつ近づいていくと、その正体が数頭のドラゴンである事に気がついたバーンは身を引き締めた。
「あ、ユリリンおひさ~!」
「ドーラちゃん久しぶり~!元気してた?」
気の抜ける会話にバーンは盛大にズッコケた。
ユナはそんなバーンを気にせずにドーラと呼んだ角にリボンを結んだドラゴンと抱擁し再会を喜んだ。




