12
ユナは目の前で絶望するバーンと複雑な気持ちで接していた。
先程握手を求めた時に手が吹き飛ぶと言ったが、実はバーンの記憶を読んでいたのだ。本人に許可無くやっていい事では無いのはわかっていたが、どうしても信用出来なかった為にやむを得ず読んだ。しかし、やはり無断でやるべきでは無かったと後悔したのだ。
ユナは初めて貴族教育を受けていた事を良かったと思えた。表向き何事も無かったかのようにバーンに接し、ユナは結界を解除した。
「とりあえず今は冒険者として戦えるように剣技を教えて欲しいな。」
「ん?魔法が使えるんだろ?要らなくないか?」
「魔法はできるだけ秘匿しておきたいの。目立ってしまうでしょ?だから人前では基本的に使わないようにするわ。」
「確かに、一般的には魔法は貴族しか使えないものだからな。」
貴族は魔法が使える物がある程度いるが、平民は基本的に魔法が使えないものばかりだった。理由としては教える者がいない事が一番の原因で、平民にも魔力を持つものは多くいるが【魔法は貴族の特権】という貴族が多く、下手に使える事がわかれば奴隷にされるか殺されるかだ。
たまにある程度の有用性がある魔法を使えると城で過重労働させられる事もあるので、平民にとっては百害あって一利なしのものだった。
ただし、冒険者の中には貴族から落ちた者や他国の者も多いので魔法使いは珍しくない。もちろん貴族達は快く思ってはいない者も多いので、たまに依頼と呼び出し憂さ晴らしする者もいる。身分が平民になったユナには魔法が使える冒険者の肩書きはとても面倒なものだった。
「バーン、私が魔法を使える事を誰かに話したら手じゃなくて頭を吹き飛ばすわ。」
「初めて名前を呼んでくれたのにそれかよ……。」
落胆するバーンにユナはクスリと笑い森の探索の再開を促した。
その後、一日かけて薬草の場所の記録と採集をし宿に戻るとユナはバーンに剣の稽古をつけてもらった。
「昨日も思ったが、ユナは飲み込みが早いな。」
「本当に?!それすっごく嬉しいな。」
バーンは満面の笑みを見せるユナの可愛さに無意識に手を伸ばしユナを抱き寄せた。いきなりの事に驚き、頭の中がパニックになったユナはバーンの鳩尾に肘鉄をし前屈みに倒れるバーンに右ストレートをお見舞した。
「貴方が変態だったのすっかり忘れてたわ!!」
ユナはバーンを置いて部屋に戻って行った。




