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「なんだこれは!」
「本当に…愚かな人達。そんなだから裏切るのでしょうけれど…。」
核が放った光は形を生していく。
変形が終わり光が収まっくると、それは黒いドラゴンとなった。
「ドラ…ゴン…?」
王が戦慄している横でユナは膝まづき礼をとる。
バーン達もそれに続くが緊張や恐れでぎこちなくなり少し不格好になっていた。
「お初にお目にかかります。始祖竜様。永きに渡り御身を拘束した事、深く謝罪申しあげます。」
「…誰だ?」
「ユナと申します。ルティーヤー様の契約者となっております師、イエニスタよりルティーヤー様からのお言葉を預かっております。」
「ん?ルティーヤー…おお!我が息子かっ!して、何と?」
ユナは魔法陣が書かれた紙を取り出し「解。」と唱えた。
すると、魔法陣は光り紙から声がした。
「お寝坊な父上へ。会えなくて寂しいから早く帰ってきて下さい。母上がカンカンです。」
紙から聞こえた声はまだ幼さの残る男児のようだった。
途中までは微笑ましい内容だったが最後の一言は始祖竜を戦慄させる。
「カンカン…。ユナと言ったな。大義であった。」
「勿体なきお言葉。」
「思う事はあるが急ぎ戻らねばならん。この場は任せた。」
始祖竜は羽を大きく広げ城の壁を破壊して飛び立った。
ユナは心の中で始祖竜の無事を祈り立ち上がる。
バーン達も緊張が解けユルユルと立ち上がり始めるが王だけは目を見開いたまま固まっている。
「…どういうことだ。貴様は何を知っていた!何をしたんだ!!」
「そうですね…貴方が知らない事を知って行動しただけです。
良かったですね。これで苦しい思いをして魔力を注がなくても良くなりましたよ。」
「…何だと。」
怒りの形相で睨みつける王をものともせずユナは王を見下す。
「ガラガ王国最後の王よ。教えてあげましょう。
初代の王は始祖竜を騙し眠らせると結界の要としたのですよ。
始祖竜は心配をかけないように妻と息子に話をしていたのでこの事態には直ぐに気づきました。
しかし、解除できるのは王だけとなっていたので手出しが出来なかったのです。
今、それが解かれました。
この国から結界が消えたのでこのままだと魔物も入って来るでしょう。」
「貴様っ!初代の宝になんという事を!!」
「あんなもの…宝なんて呼べません。」
今だユナを睨みつける王の首に手刀をきめバーンが王の意識を刈り取ると、ユナは収納から手のひらサイズの宝石を取り出し王に握らせた。
その瞬間、王を中心として結界が張られそれは国全体を覆うほどの大きさになる。
「さて、ここからは後片付けね。」
「そうだな。…お疲れ様。」
バーンはユナの頭を乱暴に撫で髪をボサボサにする。
ユナはバーンに抗議しながらも顔を隠してくれた事を心の中で感謝した。
ボソリと呟かれた「ありがとう」の言葉はバーンにしっかり聞こえていたがバーンは知らぬフリをして頭を撫で続けた。




