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105

王を無力化した今、謁見の間には用がないのでシンラとユンギに合流する為にバーンが王を担いで全員出口に向かう。

最後尾のユナはふと王妃の骸が目に付いて足を止めた。


見た目こそは人間のようだが王に触れた時に記憶を読み既に人間の区分から外れている事は把握している。


しかし、流石に哀れに思い何か被せるものは無いかとキョロキョロと探す間に王妃の骸は砂となる。


「ユナ、どうしたんだ?」


「何でもないわ。」


ユナは何とも言えない気持ちでバーン達に続いて部屋を出た。




シンラ達との合流地点にした結界の間に着くと、バーンは王を乱雑に床に転がした。


「シンラ達は来てないな。」


「探しに行くか?」


ヤンナが引き返そうと身体の向きを変えると来た方向からヒンヤリとした空気が流れ込んできた。


「寒っ!」


ヤンナが身震いをしてしゃがんだその時、叫び声と共にシンラ達が現れた。


「うわっ!避けて!!姉さん避けて~!!」


「は?」


それはまるで弾丸。

凍りついていく床の上を何処かの部屋のドアに乗り高速で滑り近づいてくるシンラ達を避ける事ができる者はおらず全員にクリンヒットした。


「イタタ…。すみませんコントロール出来なくて…。」


起き上がったシンラの目の前では気絶するヤンナとバーンの肩を揺らすヴィルーヴとユナの姿がありシンラは気まずそうにしながら頬をかいた。


「ユンギ…素直に怒られましょうね。」






シンラとユンギへの説教が終わるとユナが結界の間の扉を開けると王以外の全員が息を呑み室内に入るのを躊躇った。


核の周りには十人程倒れており、ひと目で息がない事がわかる。


「これは…。」


「何を驚いている。自分のした事の結果であろう。責務から逃げ出しさえしなければアレらもここに来る事は無かった。」


「ユナ!聞くな!!」


「私は…。」


「ユナのせいじゃない!悪いのはこんなものをつくったやつだ!」


「ふん。何も知らん若造が……。コレが今までこの国を護ってきたのだ。多少の犠牲で何万の人間が護られる。」


まるで自分がつくったかのように得意げに話す王だったが、ユナはそれには反応せずに王の左手首にはまる黄金の腕輪を抜き取る。


「それに触れるな!許されるのは王のみだ。」


その言葉を無視して腕輪を核の上に置く。


「多少の犠牲なんかでは無いわ…。貴方は、この国は搾取しつづけただけ。」


「小娘が…。」


「王…貴方は初代の王が言った言葉を覚えていないのでしょう。」


「何を馬鹿な事を。初代の言葉はしっかりと受け継がれている。“王はこの地の為”それを継いだからこそ今もこの国があるのだ。」


「いいえ。初代の言葉はそれだけではありません。貴方は半分しか護れていない。」


「ふん。“強きものは友の為にあらん”こんなもの初代の妄言。」


「…いいえ。違います。」


ユナがニヤリと笑った瞬間、核は白く輝いた。

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