102
「なるほど、男を捕まえて来るくらいはできるという事か。」
「私は…貴方の子である事を恥ずべき事だと思っています。さっさと終わらせましょう。」
ユナと王は同時に走り出し剣が交わると激しい鍔迫り合いになる。
力ではやはり敵わないユナは王の剣を弾くと後ろに跳び退きファイヤーボールを放つ。
王は表情を崩すこと無く結界を張りファイヤーボールを防ぐとユナと距離を詰めて剣を右から振り抜いた。
ユナは剣を避けきれず右腕を斬られ血が床に落ちる。
怯むことなく両手で剣を持ち振り下ろすが、王は容易くそれを避けた。
「ふむ。師は付けていなかったはずだが魔法が使えたか。教えたのは……。」
王はバーンへ視線を移しニヤリと笑うと右中指にはめた指輪に口付けをする。
王のその行動にバーンがゾワリと悪寒を感じ鳥肌が立った腕をさすっていると、扉が開かれ赤い目をした白髪の女性が入ってきた。
「退屈だろう。」
「え?この人が俺の相手って事?」
「…王妃。」
「王妃って…マジ?ユナの母親?!」
反応の無い王妃は手に剣を持っていなければドレス姿で鎧も付けていない。
体にも鍛錬して筋肉がついている様子はなくバーンには本当に戦えるのか謎だった。
「ソレは従順な私の人形だ。中々に楽しめるだろう。」
王が指輪を撫でると王妃はユナとバーンの視界から消えバーンの後ろに現れるとバーンの左の横腹を蹴り飛ばした。
「バーン!!」
バーンが激突した壁は崩れバーンの身体の上に瓦礫が被さる。
ユナはバーンに駆け寄ろうとするが王が距離を詰めて斬りかかっできたのでそれは叶わなかった。
「余所見とは余裕のある事だ。」
ユナと王がぶつかり合う中、瓦礫からはい出たバーンはゆっくり立ち上がる。
頭から血が流れてはいるが意識はハッキリしており、目の前に立つ王妃に剣を構えた。
「油断したわ…。」
「……。」
「黙りか…。悪く思わないでくれよ、なっ!」
距離を詰めたバーンは王妃に切りかかるも難なくそれをかわされる。
王妃の体勢が整う前にバーンは炎龍を発動した。
「流石にココで滅は使えなしいな。」
炎が王妃に襲いかかるがまるで踊っているかのように王妃はギリギリで避け炎龍を壁に当てて消滅させる。
炎龍による被害は黒く焦げた壁のみで王妃には何のダメージも無い。
バーンは自分の中にあった余裕をかなぐり捨て床を蹴った。




