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翌朝、ユナが身支度を整え部屋を出ると部屋の前にバーンがいた。
「おはよう、ユナ。今日はどこに行くんだ?」
「…私名乗ってなかったと思うんだけど。」
「それは愛の力だよ!神が俺に君の事を教えてくれたのさ。」
朝から胸焼けしそうな感覚に襲われながらユナは朝食を取る為に階段を降りる。当然、バーンも後を付いてきたがツッコミはいれず無視する事にした。
空いている席に座るとすぐにカレンが朝食を持ってきてくれた。そして当然のようにバーンの朝食も置かれユナはカレンに抗議の目を向けるがカレンはニッコリ笑って立ち去る。
「う、裏切り者…。」
「彼女は職務を真っ当しただけだよ。今日はどうする予定かな?俺もついていくよ。」
拒否したところでついてくるであろうバーンを睨みつけてユナはため息をついた。自由になった矢先にまさかこんなのに目をつけられるなんてとこの身の不幸をなげきながらも朝食を平らげたユナはそのまま宿屋を出た。
今日は街の外の森で薬草の自生場所の確認をするつもりの為ユナは森に向かった。もちろんバーンも一緒で、門で身分証を見せるとバーンの時だけ門番が「お疲れ様です!」と敬礼したのが腑に落ちなかった。
森に入るとユナは地図に薬草の場所を記入していく。
「へぇ~綺麗な字だね。流石は良いとこのお嬢様だ。」
「……どういう意味?」
「ユナは貴族のお嬢様でしょ?見てたら分かるよ。」
おどけながら言うバーンにユナは警戒した。
連れ戻す為の刺客だったのか脅して何かをするつもりか頭の中で可能性があるものを考える。
「そんな警戒しなくて良いよ。ただね、君が心配なんだ。世間知らずのお嬢様が生きていける程世の中甘くはないからさ。」
「……何が望み?」
「そりゃあもちろん。惚れた女に望むのは一緒にいる事でしょ。見た目が良くてBランクの冒険者で知識も豊富な俺、かなりお買い得じゃない?仲間にしたくない?」
「怪しい人物を仲間にすると思う?」
警戒を崩さないユナにバーンは少し考えた様子を見せてポケットから指輪を二つ取り出した。ペアになっているようで、シルバーの本体に赤い石がはめ込まれたシンプルなデザインだが少し禍禍しい。
ユナが鑑定してみると主の指輪と従属の指輪と結果が出た。
「これは主従の指輪で主の指輪を付けた者に従属の指輪をつけた者は逆らえない。逆らったら指輪の中に飲み込まれて指輪を壊すまで出てこられなくなる。」
「なんでそんな物を持っているの。」
「俺を飼おうとした奴から奪った。君になら俺は従ってもいいよ。」
バーンは主の指輪をユナに渡した。




