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「貴様はもう用済みだ。」
16歳の誕生日、パーティーが開かれるどころか私は王宮から追放された。
人に害を与えた訳ではなく、父王の逆鱗に触れたことも無い。
強いて言うのであれば、私が女として生まれた事が罪とされたのだ。
この日、こうなる事を私は知っていた。
だから、父王のこの言葉に私は反抗もせずに無言で礼をし自身の足で王宮を出ていった。
ガラガ王国の王の第二子として生まれた私、ユリアーナは父王にも私を産んだ王妃にも愛されなかった。
兄と弟ももちろん会話すらしたことが無い。
幼い頃に父王、王妃、兄、弟の四人が楽しそうにお茶をしている姿を何度も見て羨ましく思って駆け寄った事がある。
近づく前に近衛に止められ部屋にもどされたが、その時、世話をしてくれていた侍女に「なんで私だけダメなの」と泣いていたら理由を教えてくれた。
王族は代々男児しか認められず、女児は王位も継げない魔力も発芽しない役立たずとして普通なら直ぐに殺されてしまうそう。
しかし、私は生まれてすぐに父王が振り上げたナイフを魔法で弾いた。
魔力を持たないはずの女児が魔力を持っていた事で例外として生かされた存在、それが私。
しかし16歳の誕生日に行われる儀式で国の核に魔力を総て奪われると私の存在意義が無くなるので殺される予定。
そう侍女は教えてくれた。
6歳にも満たない子供になんて残酷な話をするのだと思うが、今は話してくれた侍女に感謝している。
それから私は暫く泣いてから生きる為の行動をした。
まずは好感度を上げようと城中の人に挨拶周りを毎日した。
父王から始まり数百いる兵士にもたまたま城に来た人にも笑顔で愛想良く挨拶し自分の存在を広めた。
最初は無視しかされなかったけど一年経ったくらいからお辞儀してくれる人や挨拶を返してくれる人ができたので良い成果だったと思う。
言うまでもなく家族は総じて無視だったが、挨拶は続けた。
次に挨拶周りをしながら逃げる為に城の中を隅々みて覚えた。
侍女に不審に思われないように無邪気に歩きまわり必死に覚え今では隠し通路すら分かる。
自分の支度が一人で出来るようになると侍女は食事の世話以外しなくなり、一人で歩き回ることができるようになったのでとても楽だった。
しかし、マナーの教師が来るようになったのでとても驚いた。
どうらや私が挨拶をした中に他国の要人がおり私を公にしなくてはいけなくなったようだ。
暗殺されなくて本当に良かった。
それからは挨拶周り、城の探索、逃走経路の作成、マナーの授業、図書室での読書、魔法の練習を繰り返す毎日。
図書室では誰も教えてくれない様々な事を本から吸収し魔法の練習は本から得た知識を元に頑張った。
10歳になるとマナーの教師も来なくなったが代わりに他国の使者に会わされる事が何度かあった。
どうやら私の容姿は美しいらしく「まるで絹のように美しい白銀の髪だ」「蠱惑的なラピスラズリのような瞳はどんな宝石も霞む程です」などたくさん誉められる。
嬉しかったけれど王妃に凄く睨まれて迷惑な気持ちが大きい。
王妃の髪だって艶は無いけど白いし瞳は猛禽類のように鋭いけど色だけはガーネットみたいな気がする。
使者に会っても何がある訳でも無く、婚約の話をしてくる者もいたが、王妃が私を貶しまくり理由をつけて即座に断った。
そんなに私が嫌いだったのかな。
まずまず魔力が奪われたらどこの国も私を要らないから嫁ぐ未来はないのに……。
そんな日々を過ごしてとうとう儀式の日。
私は儀式を終えて自らの足で王宮を出たのだ。