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教えてください

作者: 沼野雷菜


生きることって、そんなにも素晴らしいのですか?

どれだけ?どれほど?どんなふうに?どこが?何が?


私にはわかりません。わかりません。

死ぬ権利はどこにあるのですか?誰が持つのですか?生きる権利は平等にありますか?平等って何ですか?存在するの?権利の主張をするならば、義務は果たせてますか?死ぬ権利はどんな義務を果せば得られますか?死ぬ自由は与えられますか?いつかは自由に死ねる世界になりますか?それはいつですか?その日は訪れますか?生きることは死ぬことを選ばないことではないのですか?死ぬことは生きることを選ばないことではないのですか?生きる権利の放棄は死ぬ権利の行使ではないのですか?死ぬ権利を行使できないのはなぜですか?お前は答えられるの?


自ら生きることは正しいことですか?正解ですか?正義ですか?自ら死ぬことは間違ったことですか?不正解ですか?悪ですか?

どうして、そんなことが言い切れるの?どうして、そんなに胸をはれるの?どうして、そんな自信が持てるの?


生きるのって面倒です。苦しいです。辛いです。

飯を食べねばならず、眠らねばならず、他人と接しなければならず、働かなければならず、学ばなければならず、息を吸って吐いて排泄し、それらを何十年と繰り返す。

私は死ぬことよりも、そっちのほうが恐怖です。あと何十年生きていかねばならないのか。あと何十年苦しまねばならないのか。


死ぬことは、それまでのことが全て無になるということ。そして誰も死なないことはできない。つまり、人間は、今までやってきたことも、今まで受けてきたの苦労も、全てがいつの日か無になるようにできているのです。


立派に生きれば、誰かの心に残るかもしれない。でもその誰かも死にます。

何かを成し遂げれば、歴史に残るかもしれない。でもそんな僅かな人種にお前らはなれますか?そして、その歴史とやらはいつまで続く?千年後は?一万年後は?そのときにまだ名前が残っているでしょうか?人類は滅亡してませんか?地球はありますか?そんな先の未来に希望はありますか?お前の意思はありますか?何もないよ。


楽に生きて楽に死にたい。

それを望むのがそんなにいけないことですか?安心して死ねる世界はどこにあるのですか?


死について前向きになれませんか?どうして否定的なのですか?無理に死ねとも、殺されろとも言っていないのに。なぜそこまで死ぬことを忌み嫌うのですか?私の考え方は間違っていますか?感情以外の話をしませんか?現実を見ませんか?


どうしてわかってくれないのですか?どうして?なぜ?なんで?何がわからないの?

どうかお願いです。私以外みんなみんな死んでください。煩わしいので。鬱陶しいので。理解してもらえないので。理解する気もないだろ。

私が知ってる人については悲しんであげます。それから次に私も死にます。だから安心して死んでください。


死ぬ権利をどうぞ行使してください。人は平等に生きる権利があると主張したお前は、人は平等に死ぬ権利もあるのだと理解してください。


それでもなお、生きることのみを肯定し、死ぬことのみを拒絶するのならば、どうか私に教えてください。生きることのメリットと、死ぬことのデメリットを。なるべくわかりやすく。


他人の命は他人のもの。だけど私の命は私のもの。だから他人にとやかく言われる筋合いはないと思うのです。なぜ人は自分の命だけでなく、他人の命にまで口出しをするのですか?道徳だとか、命の大切さだとか、どうでもいい御託を並べるのですか?自分の命を守りたいなら自分の命だけ守れるように努力すればいい。なぜ、生きることと死ぬことを比べて死ぬことを決めた他人の命さえも守ろうとするのですか?エゴですか?なんとなく後味悪い?それはこの社会がそうしているからです。死ぬことが当たり前になれば、そんなの気にならなくなります。だって、人は慣れる生き物だから。


明日死ぬことにしたんだ。それはおめでとう。そんな会話ができる未来はないのですか?生まれてきた日を祝うように、死ぬその日を祝福する日はこないのですか?どうして?


私は、私のために、私だけの命を、私の好きなときに、私が好きなように、私の決断で、終わらせたいだけ。生きる権利と同じように、死ぬ権利を主張しているだけ。それが理解できないお前らも世間も社会も歴史も世界も全部滅んでください。

私は私を愛しているので、私の言葉にしか、私の思想にしか、筋が見えません。私はお前らの筋の通らない絶対生存理論を理解できません。理解しようと努力したものの、理解できませんでした。だって、私は今この瞬間死んだとしても後悔しないと思えるから。まあ、死んだら後悔も何も感情すらなくなるわけですけど。すべてなくなるから後悔しないとも言えますね。


私が死を選ぶ日までに、どうか教えてください。生きることが絶対である理由を。死ぬことが忌避される理由を。お前らが死にたくない理由を。お前は私ではない。私はお前ではない。それをよく考えてください。私はこの考え方を理解してほしいと思うけど、強要したいわけではありません。死んでほしいと思うほど鬱陶しいと思うけど、滅んでしまえと呪いたくなるほど窮屈で煩わしい世界だけど、私以外はみんな他人だから考え方が違うのは当たり前なのです。だって、お前は私ではないし、私はお前ではない。わからないならわからないでいい。強要したそれは、押し付けた価値観は、けして正しいとは言えないから、それは望まない。ただ教えてほしいのです。生きることが正しいと言えるその自信の根拠を。死ぬことがよくないことだと言うその理由を。私の考え方のどこが理解できないのか。私の考え方は間違っているのか。私の考え方の間違いは何か。生きることが絶対であるという考え方は間違っていると思っている私に。正しい答えを教えてください。納得させてください。理解させてください。それができないのなら、やっぱり私はその考えを否定する。私の考えこそが正しいのだと主張します。私は私で、お前はお前で。とてもわかりあえない生き物だったというだけだから。それはそれでいいのです。だからお前らの言う生きることについて、死ぬことについて、どうか、教えてください。


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