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第17話 怪しい雲行き

更新不定期です


 時は数日前に遡り、シアが訓練を始めた日と同日──

 


 犯罪者の処遇が決まるまで一時的に閉じ込めておく留置所に、5人の人影があった。



 そう、シアを攫おうとし、久遠によって返り討ちにされた魔族の男達である。






 「 くっそ…なんでオレがこんな目に……」


 「 ボス……これからどうします…?」


 「 今考えてるから黙ってろ!!」


 「 へ、へい!」



 クソっ、クソっ!役ただず共が……


 お前らはオレを逃がすことすら出来ねぇのか!!


 クソっ……まあいい、まだ役にたちそうだからな…………



 それよりどうする……、このまま犯罪奴隷になるなんて真っ平御免だぞ……オレはこんな所で終わるようなやつじゃねえ!!


 奴隷紋を刻まれていない今ならまだ間に合う……!何とか逃げねぇと……!!



 そうだ、こいつらを囮にすれば───



 ボスと呼ばれた男がそう思い、顔を上げるとそこには、


 「 大変そうだねー、おじさん達。」



 檻を挟んで目の前に、黒色のローブを身にまとい姿を隠している人物がいた。


 僅かにローブの隙間から見える髪は黒色だ。


 声質からして少年のようだ。



 「 誰だ!?」


 「 ボクのこと?ボクはボクだよー。」



 にこにことしながら答えるローブの人物


 ボク……?聞いたことねぇ名前だな



 そんなことを思ってると部下1がボクって野郎に向かって口を開いた。



 「 いやだから誰だよ名乗れよ。」



 …………こいつの名前ボクじゃねぇのか?



 「 えー、名乗る必要ある?」


 「 ボスが名乗れって言ってんだ!さっさと名乗れよ!」



 部下3がそう叫ぶとどうやらローブのガキは気分を害したみてぇで、めんどくさいなぁとボヤきながら、



 「 あーもーうるさいよー?せっかくいい話持ってきたのに、帰っちゃうよ?」



 と言い、立ち上がった。


 待て、こいつ今なんて言った?


 いい話……だと!!??



 オレと同じように気になったのか、部下2が眉をひそめて



 「 いい話?」



 と、問いかけた。


 それを聞いたローブの人物はやっと話が進めるとでも言いたげな雰囲気で、また檻の前にしゃがんで目線を合わせてくる。

 まあローブのフードで隠れて目は見えねぇけど



 「 おじさん達、子供の人族にボッコボコにされたんだって?」


 「 なんでそれを!?」


 「 まあいろいろとねー、てかそんなことどうでもいいでしょ。」



 そう言うと、ローブのガキは急に立ち上がってオレらが入ってる檻の上に座った。


 このガキ……っ!

 オレを見下してんのか!?


 そんなオレのイラつきも気にせず、ローブのガキは楽しそうな口調でオレ達に話しかける。



 「 そ、こ、で!おじさん達こんなのいらない?」



 上からそんな声が聞こえてきたと同時に、ローブのガキは何かの液体が入った小瓶を見せてきた。



 「 …?なんだそりゃ?」



 紫色できみわりぃんだが…



 「 強くなるお薬ー!」



 その言葉を聞いた部活2が眉をひそめ小さな声で



 「 ……変な副作用とかあんだろどうせ。」



 と言うと、それが聞こえたのかローブのガキは心外だと言わんばかりに檻を上からガンガンと叩く。



 「 決めつけないで欲しいなぁ。」



 部下4が怪訝な顔をして



 「 んで、なんでそれを俺らに渡す?お前になんのメリットがある?」



 と聞いたら、ローブのガキは少し言いずらそうに答えた。



 「 んー、処理に困ってるんだよねー」



 処理……?



 「 このお薬ね、使用量を超えちゃうとちょーと大変なことになっちゃうんだ、あ、ちゃんと守れば凄いお薬なんだよ?まあ、だから危険だーって言われてこの国では使用が禁止されてるみたいでねー、作ったはいいもののこれ持ってるとこの国から出られないわけでー、ちょっとした理由で捨てる訳にもいかないしー」



 つまり…



 「 それを俺らに売ることで処分しようと。」


 「 そうそう!だってお互いいい事あるじゃん!!ボクは薬を処分できる、おじさん達は薬を飲むことによってボコボコにされたあの女の子にやり返せる、ね?」



 ……確かに


 オレが真剣に悩んでると部下共が慌てて騒ぎ立てやがる。



 「 ボス、こいつなんか胡散臭いですよ、辞めておきましょう。」


 「 そうですよ、わざわざ薬なんかに頼らなくてもボスなら大丈夫ですよ!」



 騒ぎ立てる男の部下を無視してローブの人物は喋る。



 「 それに、これ貰ってくれるならその牢屋から出してあげる。特別サービスで外に逃げれる道具もあげちゃう!」



 なん……だと!?


 最高じゃねぇか!



 「 って言っても、出さなきゃ渡せないから出すだけなんだけど。」



 そんなの関係ねぇ、大事なのは結果なんだからな!



 「 いいだろう、よこせ。」



 オレがそう言うと部下共は驚いた顔でオレを見る。



 「 ボス!?」



 お前らはオレをここから出してくれんのか?オレの足を引っ張らねぇのか?そんなわけがねぇ。

 役にも立たねぇ奴らの言葉とオレに利益しか与えねぇ奴の言葉、どっちを選ぶか。


 答えは最初っから決まってんだよ!



 「 良かったー、貰ってくれなかったらどうしようかと思ったよ。」



 そう言うと、ローブのガキは檻の上から飛び降りてオレたちの方を向いた。


 次の瞬間、何かが光ったと思ったら檻の上側がずり落ちた。



 ………………は?


 こいつ……今何をした…………?



 オレらが唖然としていると、ローブのガキは近づいてきてオレの手に何かを握らせた。


 それは例の薬と、透明な結晶の中に何らかの魔法陣が刻まれたものだった。



 「 はいこれ、転移石!使い方は知ってるよね?」


 「 おいおいマジかよ!?転移石!??」



 転移石つったら結構高価なもんだぞ!?


 魔法石自体がそれなりに高価なもんだし、転移魔法は元々使える奴が少ないのと扱いも難しい魔法だ、少なくとも1個で7日の食費が消える物だ!!


 

 「 んっふふふー、感謝してよね〜!」


 「 ああ、ありがとよ!」


 「 どういたしましてー!」



 ちょっともったいねぇがこれを使ってここから逃げ出して、薬使って強くなってあのガキ共を殺しに行く、完璧じゃねぇか!!



 「 待ってろよあのクソガキ共……!」


 頭の中に転移したい場所を思い浮かべる。

 ローブのガキが何か言おうとしてるが関係ねぇ、オレはさっさとここから出て殺しに行くんだよ!!


 「 じゃあねー、また捕まらないようにがんばー……ってもう行っちゃった。」


 ローブの人物の言葉を最後まで聞くことなく、男達は転移石で逃げ出した。



 1人になったローブの人物は俯くと、肩をプルプルと震わせ始める。



 「 く、くくくくく……」



 誰もいない静かな空間で一人の少年の笑い声が響く。



 「 あっははははははは!!!無理!もう無理!!ちょろすぎでしょ!!あーー可笑しい!!」


 「 ばっかだなぁ、疑ってはいたみたいだけど結局騙されてやんの!部下の方が賢いんじゃないの?って言ってもあんな怪しげ満点の答えで結局流されてたから部下も賢くはないか〜。」


 「 まあ、あとは結果を待つだけかな、それ報告したら任務完了〜。」


 「 あんまりゆっくりしてると怒られちゃう、そろそろボクも移動しよっと。」



 そう言うと、ローブの少年は音もなく消えた。

 その場に残されたのは無残に破壊された檻のみ。


 警備兵がこのことに気づくのは、夜が明け朝になってからだった。

用語解説


【魔法石】:特定の結晶の中に魔法陣を刻むことによって、その魔法を行使することが可能になる。1回限りの使い捨て(魔法陣をもう一度刻めば使用可能だが、結晶の純度が落ちてしまうため使用魔力量が増えたり、魔法の威力が落ちたりする。)であり、魔法を行使する際の魔力は使用者本人の魔力を使う。いわば魔法のサポート道具。魔法の威力などは使用した魔力量によってかわる。値段は刻まれている魔法陣の種類によって異なる。もちろん、魔法石の制作は刻んだ魔方陣の魔法を使える者にしか出来ない。知識だけあっても不可能。また、魔法陣を刻むのには相当な技術が必要。

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