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第16話 夢のお話

更新不定期です


ちょっとぐろ注意


 さて、と、……


 今日しなきゃいけないことを全て終わらせて寝る準備、いや、夢を見る準備をする。




 昨日夢に出てきた黒い人影は私に言ってきた。



 『早くしないと夢に飲み込まれる』



 どういう…、ことなんだろう。



 あの黒い人影が誰なのかも気になりすぎるし……


 借りって何……?



 考えれば考えるほど頭がパンクしそうになる。




 分かってることは一つだけ、…このままこの夢を見続けると大変なことになる。


 あの黒い人影が教えてくれたこと。



 この夢と決着をつけるには……私が、村で起こったこと──自ら蓋をした記憶を受け入れること



 ……いつまでもうじうじしてちゃいけないんだ



 瞼を閉じ、意識を沈ませる



 覚悟は出来た




 今夜───この夢と決着をつけてやる




──────────────────────




 ……目を開くと、赤。


 やっぱり、いつもの夢だ。



 ちゃんと見よう、あの時何が起こったのか思い出すために、みんなの死を受け入れる為に。



 大丈夫、パニックになるな、落ち着いて情報を受け入れていくんだ。



 情報をひとつひとつ認識していく。



 一面に広がる赤色は、夕焼けの色、炎の色、血肉の色。


 私を染める赤は、自分のものなのか、他人ものなのか分からない血。


 そして、辺りに散らばる赤黒いもの───誰なのか分からない肉、村人の肉、友人の肉



 「 うっ……」



 ……吐き気が込み上げてくる。

 頭痛が酷い。


 ズキズキと痛む頭を押さえながら、真っ赤に染まった村の中をまるで何かに吸い寄せられているかのように歩く。



 数分歩くと、とある場所に着いた。


 私の……家。



 扉には本来無いはずの錠前がついている。


 私が、逃げて鍵をかけて奥底にしまい込んだ記憶。



 いつの間にか手の中には赤色の鍵が握られていた。


 見ていると不安になるような赤色。


 まるで鍵が「逃げてしまえ、隠してしまえ、その方が幸せだ」と言っているように感じる。



 鍵から目線を外し1度深呼吸をする。



 もう逃げないって決めたんだ。


 ……よしっ、覚悟は決まった。行こう。



 鍵を開けて中に足を踏み入れると、ムワッと濃密な血の匂いが押し寄せてくる。


 不思議と匂いは気にならなかった。


 

 中に入るとまず目に付くのはやっぱり赤、血の色だ。


 そして、目の前には赤黒いもの……、変わり果てた───両親だ。



 それを見た瞬間、一際ひどい頭痛が走ったと思うと頭の中で映像が、記憶が流れ始めた─────────








 「 ねえシア、そろそろ暗くなってきたしかえろーよ。」


 「 うん、わかった!!」



 白い花が咲き誇った場所で、2人の男女が帰路に着く。


 さく、さく、と花を踏まないように花畑を抜け、自らの村へ帰るための坂を上がる。



 「 ねぇねぇ、████、あれって……」



 坂の中腹にも差し掛かった頃だろうか、少女──シアが唐突に少年に話しかけた。


 彼女が指さす先には、真っ黒な煙がもくもくと空高く上がっていた。



 「 黒い……煙?もしかして火事……?」


 「 っ…!?急いで帰ろう!!」


  「 うん。」



 シアと少年は走った。


 村に着いた時に2人が見たものは、赤々と燃え盛る村と、見知らぬ男達から逃げ惑う村人達だった。


 シアの村は、襲撃にあったのだ。



 村人達を追いかけ、殺していく男達。



 彼らは村人を殺してはその内臓を引きずり出し、袋にしまっていった。


 別の場所では魔法を使い、村人達の血を集めている男もいた。



 彼らの正体や目的は、当然ながらシアにはわからなかった。



 なぜ村の人が殺されているのか、なぜ彼らは血肉を集めているのか、そんなことはまだ世間を知らない辺境の子供には分かるはずもなかった。



 分かることは、仲のいい人達が殺されていること。

 その事実は、まだ幼いシアには耐えきれないものだった。



 「 やだ…やだ!!お母さん!お父さん!」



 シアはパニックになりそう叫ぶと、男の子の「待って」という言葉を無視して村の方へ駆け出した。



 シアは必死で走った。


 自らの家族が待っているはずの家へ。


 奇跡的に襲撃者に襲われることなく家に帰ることが出来たシアは、家につくなり大声で叫んだ。



 「 お父さん!!お母さん!!帰ったよ!!私っ…、シアだよ!返事して!!!」



 しかし、返事は帰ってこなかった。



 当然である。


 彼女の両親は、彼女の目の前で肉塊と成り果てているのだから。


 両手足は引きちぎられおり、腹部は大きく切り裂かれ、内臓がくり抜かれている。

 顔には幾つもの切り傷があり、鼻や耳は切り取られ、目は抉られていた。



 シアが()()を両親と認識できたのは、ほとんど奇跡に近いだろう。


 それほどまでに死体の損傷は激しかった。



 「 とう、さん…?……かあ、さん………?」



 震える手で肉塊(両親)にふれる。


 ぐちょりとした感触


 まだ生暖かく、つい数十分前まで生きていたことがわかる。


 コロンと、何かが転がる。


 見ると、男達が回収し忘れていたのか、片方の目玉が転がってきていた。



 「 あ、ああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ!!!!!!!!!!!????????」



 ついに彼女の脳は、理解することを破棄した。


 

 その瞬間、彼女の視界は、思考は真っ赤に染まっていき─────彼女の意識は途切れた。




 気づいた頃には全て終わっていた。


 周りには村人の死体の他に男達の死体が追加されており、自身の体には自分のかも男達のかも分からない血が大量に付着していた。


 足の力が抜け、ドサッと地面に倒れる。


 そしてもう一度、シアは意識を手放した。




──────────────────────




 パチリと目を開けると、見知った天井が目に入る。


 魔王城の天井だ。



 どうやら過去の回想から目が覚めると同時に夢の世界からも追い出されたようだ。



 少し、自分の中で何かが変わった気がする。


 なんだかちょっとすっきりしたような…?



 これであの黒い人影が言っていた、夢に飲み込まれるっていう危機からは無くなったのかな…?


 そうだったら嬉しいんだけど……


 ただ、もしそうだとしても一つ気になることがある。



 視界が真っ赤になった後、私は何をしていた……?


 なんで血だらけだった……?


 死体が増えていたということは…、私は人を、村を襲った男達を殺していた……?



 そこだけが、思い出せなかった。


 私が意図的に記憶から消していたのではなく、純粋に記憶が無い。


 意識を失う前と後で周りに変化があるんだから、絶対になにかしていたはずなのに、思い出せない……


 つまり、意識がない状態で私の体が動いていた、ということ……?



 ………なにかがおかしい…、()()()()()()()()()()、そんな気がする



 だって私は意識がない状態で動けるような凄い人物じゃないから。


 なら、別の意思が働いていた、もしくは、本能のままに暴走しているような状態になっていた……?


 でもだからといってあの男達を私が殺せる……?



 …………いくら考えてもわからない


 全く身に覚えがない



 ひとつ解決したらまた謎がうまれる…



 よく考えてみると私、知らないことばっかだな……



 自分のことも、村を襲った奴らのことも…





 でも知らないのなら、これから知ればいい


 私は今、自由が与えられているんだから


 奴隷だったときのように、不自由じゃないんだから




 今、私に出来ることをしよう


 きっと、それが最善の方法



 とりあえずやることは決まったんだから、行動してみよう



 それでも分からなかったら、またその時何をすればいいか考えればいい



 「 よしっ!」


 と一声気合を入れる



 父さん、母さん、みんな、あと黒い人影さんも。心配かけてごめんなさい。私はもう、大丈夫です!



 もう、逃げたりなんてしない。


 前を向いて進もう


 それが1番いいんだ!






 ……そういえばあの黒い人影はあの男の子だったのかな?

 でもあんな赤い目だったかなぁ……?あの男の子……。



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