第12話 訓練①
サニィさんとの買い物を終わらせてお城に戻ってきた。
私が大人になるまでは、借りた家の隣の人がしばらく様子を見てくれることになった。
今のところ順調に進んでるんだけど……一つだけ問題というか……、ちょっとした決意が私の中で生まれた。
えっと、あの、早く働けるようにならなくちゃと思いました。
家具とか買ったんだからお金が大量に必要なのは……覚悟してたけど……見たことも無い硬貨が出てきた時点で……やばいと感じた……。
使ったお金は返せとかはそりゃ言われてないけど……、借りたものは返すのが普通だよね…、というか返さなきゃ私自身が納得出来ない。
受けた恩は返さなきゃ!
じゃなきゃ何だかモヤモヤするもん。
そのためには色んなことを学ばなきゃ……。
まだ暫くはお世話になると思うと……ほんとに申し訳ない……。
……よし!頑張ろ!!少しでも早く独り立ち出来るように!!
えーっと、午後の訓練は確か………………あれ?そう言えば何も聞いてないけど……、どこ行けばいいんだろう……?部屋で待ってればいいのかな……?
「 おーい、シアちゃん!!」
そんなことを考えてると、不意に私を呼ぶ声が聞こえた。
この声は……
「 …ルクス……さん?どうしたんですか?」
私を魔王城まで連れてきてくれた人、ルクスさんだ。
「 聞いたよ、訓練するんだってね。」
誰から!?
何!?魔界って情報流出激しいの!??
「 ま、まあ……、鍛えていて損はないかなと思っただけです。」
「 そう考えれるのは凄いことだよ。自分のことは自分でしようって意思があるってことでしょ?」
んー、まあ確かに自分のことは自分でしようって意思はある。
「 確かにそうですが……、えっと、あの、それを言いにわざわざ……?」
「 あっと、そうだった。シアちゃんを訓練所に連れてくるよう頼まれたんだ。いこっか。」
あ、だから私が訓練するって知ってたのか。
なるほど納得、と思いながらルクスさんのあとについて行く。
「 連れてきました。」
ここが、訓練所……?
訓練所で私を待っていたのは、沢山の兵士……ではなく、2人の人物だった。
私もよく知る人物──カイナさんとレヴィリアさんだ。
……まさか…この2人が教えてくれるなんてことじゃないよね?
2人とも相当な立場にいた気がするから、私の訓練に付き合うほど暇なわけないもんね、…まさかね?
「 ありがとうございます。ルクス様。」
「 お疲れ様、ルクスちゃん♪」
うーーーーーん?これは、そのまさかっぽいぞ???
「 いえ、これも僕の仕事なので。それでは失礼します。」
そう言って、ルクスさんは帰ろうとする。
まって……、この2人の中で1人にしないでぇ……。
「 待ってルクスちゃん。ルクスちゃんも手伝ってくれるかしら?」
私のそんな気持ちが通じたのか、元々その予定だったのか、レヴィリアさんがルクスさんを引き止めた。
引き止められたルクスさんは、戸惑いの表情を浮かべていた。
「 僕が……ですか?お二人が教えたら僕から教えれることはないと思いますが……。」
「 まあまあ、いいから♪」
「 は、はあ……、まあ、僕が出来ることがあるのでしたら……。」
そんな感じで、ルクスさんも私の訓練を手伝ってくれることになった。
良かった……、ほんとに良かったっ……!
残ってくれてありがとうルクスさん!!ルクスさんを呼び止めてくれてありがとうレヴィリアさん!!
「 お忙しいところ、時間をとってしまい申し訳ございません。」
カイナさんがそう言って軽く頭を下げると、ルクスさんは慌てたように
「 いえ、そんな!こういうことも仕事の1つなので!!私ごときに頭を下げないでください!!」
と言って、周りをキョロキョロして、ホッとしたような表情をした。
?
ルクスさんは何を気にしているんだろう?
ま、私には関係ないか。
「 さて、シア様。訓練をしたいと仰っていると伺いましたが…、どの程度を目標としているのですか?」
カイナさんがそんなことを聞いてきたけど……。
「 えっと…………。」
目標……。
特に決めてなかったな……。
どうせ強くなるのなら限界まで挑戦してみたいけど……。
「 …まあ、目標は後ほど決められれば良いでしょう。先にシア様の現時点でのお力を図らせてもらいます。」
うんうんと頭を悩ませていると、後回しにされちゃった。
まあ、たしかにあんまり重要じゃ無さそうだもんな……、少なくとも今は。
「 シア様、魔法はどのようなものが使えますか?」
「 えっと……、生活魔法をほんの少しだけ…。」
私がそう言うと、カイナさんは何かを考えながら、
「 ふむ…、では魔法は基礎から教えた方が良さそうですね…。」
と言った。
「 そうね、最初のうちは私が教えるわ。まずは魔力の操作を覚えなきゃいけないもの。私の得意分野だわ。」
レヴィリアさんもそれに賛成した。
しかも、自分が教えると言った。
まあ、たしかにレヴィリアさんと会う前に魔王様から聞いたことを考えると、魔力の扱いでレヴィリアさんの右に出る者はいなさそう……。
「 そうですね、では、お願い致します。」
カイナさんも特に反対すること無く、レヴィリアさんに任せた。
「 まっかせなさい!直ぐに覚えさせてあげるわ。」
私はというと……、若干、いや、結構不安……。
いや、実力に関してはまっっっっったくもって疑ってない。
ただ……、前回のことがあるから……どうしても……ね……、どんな訓練方法になるか……すごい気になる…………。
「 シアちゃんは得意な武器とかあるかい?」
ルクスさんがそんなこと聞いてきたけど…、今までただの普通の子供だったので武器なんか持ったことないです……。
「 …使ったことすらないです……。」
「 あー……、まあ、そうだよね……。じゃあとりあえず、あそこにあるのから1番自分が使えそうな武器取ってみて。」
そう言ってルクスさんが指さした先には、訓練用なのかな……?木製の色んな種類の武器があった。
近寄って見てみると、すごく使い古されてることがよく分かる。
普段兵士さん達が訓練で使ってるのかな…。
そんなことを思いながら、並べられた武器を一つ一つ手に持ってみたりして、吟味していく。
大剣は論外でしょ、両手剣もちょっと重いかも……、双剣とか弓はそんな技術ないし…、短剣は軽すぎる……。他のも見てみるけど、どうやって使うのって武器も沢山ある……。
うーーーん、この中だと……片手剣かな?
リーチもそれなりだし、重さも軽過ぎず、重すぎずで丁度いい。
「 これに、します。」
私がそう言うと、ルクスさんはひとつ頷いて、
「 じゃあ……、頑張ってね?」
って言って、カイナさんの方を見た。
「 …………え?」
「 武器は決まったようですね。では、始めましょうか。」
にこり、と笑うカイナさん。
まって?
武器を持たせたってことは模擬戦するってことだよね?
カイナさんが相手なの??
私多分というか絶対なにも出来ないよ??
格上だよ????
いや、まあ、何となくそうだろうなとは思ってましたけどもー…、事実を目の前にすると思考がついて行かない……。
「 では、いつでもどうぞ。」
カイナさんはそう言って、武器を持ったり、魔法を準備したりする様子もなくいつもの笑顔を浮かべて立っている。
今はその笑顔が不気味に感じる。
行きたくない……なぁ。
でも行かなきゃ始まらないよなぁ……。
うーー、強くなるためなんだ!
行け!!私!!
私は、覚悟を決めてカイナさんに向けて走り出した。
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