第11話 双子
あの後、サニィさんと色んなところを見て回って小さな一軒家を貰うことが決まった。
1人で生活するのはすごく不安だけど、ワクワクする感情もある。
早くきちんと生活出来るように仕事を見つけて、お金を稼がなきゃ。
いつまでも魔王様達に頼ってちゃダメだもんね!
1人で生活できるようにしなきゃ。
まあ、こっちの常識とか全然知らないから当分はお世話になっちゃうけど……。
それと、もう1つ。
剣と魔法の訓練をつけて貰えることになった。
まだどんな訓練になるのかはわかんないけど、兵士の訓練に混ぜてもらう感じなのかな?
絶対に、ある程度の力は持っていた方がいいってことは昨日起こったことでわかった。
昨日のように襲われたら、今の私には何の力もないから抵抗することすら出来ない。
昨日までの私は、訓練しても魔族にはかなわないのなら意味がないって諦めてたけど、きちんと訓練すれば魔族にも勝てるようになることが分かったんだもん。
鍛えないという選択肢はないよね!
私の安全の為にも、自分の身は自分で守れるようにならなきゃ!
……なんか、明るくなったな、私。
自分でもびっくりしてる。
まあ、暗いよりはマシだからいいんだけどね。
さあ、今日も頑張るか!
訓練は今日の午後からつけて貰えることになってて、朝はまたサニィさんと一緒に城下町にお出かけすることになってる。
私が生活に慣れるまでお世話してくれる人を探すのと、新生活に必要な物を買いに行くことが目的だったはず。
まずは、着替えなきゃ。
私はクローゼットに駆け寄ると、何故か種類が増えている衣服の中から昨日着てたのと同じような物を選んで着る。
これでいいかな。
その場でクルリと回って、何も問題がないことを確認して部屋から出る。
えっと、確か部屋を出て右に曲がってまっすぐ言ったところに……ん?
昨日教えて貰った道を思い出しながらお城の中を歩いてると、廊下の先から見覚えのある黒髪の人──魔王様が歩いてくる。
魔王様の後ろには、金髪の……確か、カイナさん……だっけ…………?が付き添っていた。
何やらお話中らしい。
邪魔をしないように壁の方によっておこう。
「 む、シアか。少しはこっちでの生活に慣れたか?」
って思ったら魔王様の方から話しかけてきた。
お話してたことはいいのかな……?
まあ、でも話しかけられたのなら答えなきゃ失礼だよね……?
「 …はい。魔王様のおかげで、何とかやっていけそうです。ありがとうございます。」
そう言うと魔王様はフッと笑い、
「…環境なども変わって、色々と大変だろう。何かあれば遠慮などせず、我らを頼れ。」
……魔王様からしたら私は完全に赤の他人なのに…………、ほんとにいい人なんだな、魔王様って。
「 ありがとうございます。では、もしもの時はよろしくお願い致します。」
そう言って、私はぺこりと頭を下げた。
「 うむ。ではな。」
魔王様はそう言うと、歩き出し、またカイナさんと話し始めた。
…………そう言えば魔王様って普段どんなお仕事してるんだろう。
今度会った時に聞いてみようかな……ってさすがに無礼かな……。
そんなことを考えながら歩いてると、はい、迷いました。
だって!!しょうがないよね!!まだここに来てから数日しか経ってないし、魔王城物凄く複雑で広いし!!!!うん!!しょうがない!!
…………誰に言い訳してるんだろ私は。
まさか街で迷った後にお城で迷うことになるとは思わなかったよ……。
とりあえず人を探さなきゃ……。
って思ったけどその必要はなかったみたい。
メイドさんらしき人が向こうから歩いてくる。
サニィさんぽい。
てっきりもう外で待ってるのかと思ったけど……あ、私が遅かったから探しに来たとかかな……。
あれ?胸元のリボンが昨日は赤色だったのに青色になってる。
ん、まあ、特に気にすることじゃないかな?
私はサニィさんに駆け寄った。
「 すみません…、道に迷ってしまって……。わざわざありがとうございます。」
サニィさんは首を傾げ、私を見ている。
「 ……。」
どうしたんだろう……?じっと私を見つめて喋らない……。
「 サニィ……さん?」
私がそう話しかけると、何かに気づいたように…というか納得したように……?傾げていた首を元に戻した。
「 …シア様、私はサニィではなくサクルです。」
………………………………………………?????????????????
「 えっっっっと、その……、ごめんなさい……。」
と、とりあえず謝る……。
確かに……もう1人いた気がする……。最初に魔王様と会った時……。
あんまり見てなかったから忘れてたけど……、確かにサニィさんともう1人、すごく似てる人がいた気がするっ……!!
「 よく間違われますのでお気になさらず。私は青色、妹は──サニィは赤色のリボンを着けているので、それを見て判断するといいですよ。」
待っっって、1回整理しようか。
目の前のサクルと名乗った人物をみる。
サニィさんと同じ色の髪と瞳。
サニィさんと同じくらいの長さの髪。
サニィさんと同じくらいの身長。
サニィさんと同じ服…あ、リボンの色が違う。
サニィさんと同じ声色。
そして、サニィさんと全く同じ顔立ち……。
結論、サニィさんと違うところ、メイド服のリボンの色だけ。
うん、これは間違えるわ!!!失礼だけども!!!
リボンの色が違うことを知ってないと全然見分けがつかない……。
もしかしたら、雰囲気とか、性格とか、ちょっとした動作が多少違うのかもしれないけど……、出会って数日の人には見分けられません…………。
「 シア様?どうしたのですか?」
軽く放心状態になっていたのか、サクルさんに心配されてしまった。
「 なんでも……ないです…。」
「 そうですか。……そう言えば、シア様はどうしてここに?」
「 あ…、その、実は……」
話さない理由など特にないというか、どっちかと言えば助けて欲しいので私は、迷子になった経由をサクルさんに話した。
「 なるほど。では、私が案内致しましょう。」
「 お願いします……。」
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それから、サクルさんに案内されて何とかお城の外に出て、サニィさんと合流することが出来た。
途中でいろんなことが起こったけど……。
爆発音がしたり、崩壊音がしたり、悲鳴が聞こえたり、爆発音がしたり爆発音がしたり爆発音がしたり爆発音がしたり……。
サクルさんは、「 いつもの事です。」って言ってスルーしてたけど…、魔王城ではそんなに頻繁に爆発が起きてるの……?
うーーん、うん!!
考えることを放棄しよう。
視線を前に移すとサニィさんとサクルさんがお話してる姿が見える。
……やっぱり全然見分けつかないなぁ。
あ、そんなこと考えてるうちにお話が終わったみたい。
「 それでは、お気をつけて行ってらっしゃいませ。」
そう言ってサクルさんはお城の中へ戻っていく。
「 行きましょうか、シア様。」
サニィさんもそう言って街へ歩き始める。
こっちに来てからほんとに毎日驚くことばっかだなぁ……。
しみじみとそう思いながら、私はサニィさんを追いかけた。
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