表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/23

第10話 サニィさんを探せ


 人を探すことになったわけだけど……、どこにいるんだろう……サニィさん……。




 「 えーと、誰を探してるの?」



 クーちゃんが私にそう聞いてきた。


 あ、そっか、容姿とか知らなきゃ探そうにも探せないよね。



 「 サニィさんっていう魔王城のメイドさんなんだけど……、ピンク色の瞳と髪の毛をしてる……。」


 「 へ?サニィお姉ちゃん?」


 「 知ってるの?」


 「 うん!僕もちょっとだけお世話になったことがあるから。」



 ?

 お世話に……?

 どういうことだろう……?



 「 というか、サニィお姉ちゃんならさっきからずっとそこにいるよ?」


 「 へ?」



 私は急いでクーちゃんが指差す方向を見たけど、誰もいない。

 そこにあるのは大きめの木箱だけ。

 あとは、普通の路地裏。





 ……いない?本当に……?


 意識を集中させて初めて気づいた。

確実に、何かがそこにいる。



 じっと見つめていると、木箱の裏から見覚えのあるピンク色の髪の毛の人が出てきた。



 「 流石です。久遠様、シア様。」



 その人───サニィさんは無表情のまま、そう言いながら私たちの前に姿を現した。



 「 えっへん!凄いでしょ!!」



 クーちゃんはそう言って胸を張ってる。



 ……え?待って??えっ???


 ここに居るってことは……え??

 しかも隠れてたよね…………???



 ……もしかして私が迷子になったのって……、サニィさんの図らい……?考えすぎ……?





 「 ど、どうして……?」



 思わず口から出てしまった疑問の声にサニィさんは、



 「 お恥ずかしいことに、この国にはシア様が遭遇したように、取り締まっているにも関わらず生贄を拉致しようという輩が少なからずいます。なので、そのような輩をおびき出すために少しだけ、利用させて頂きました。誠に申し訳ありませんでした。」



 と言って深々と頭を下げた。


 なるほど……



 「 頭を上げてください。もう気にしてませんから。」



 うん、確かに怖い思いはしたけど、こうして謝ってもらえたし、この国に住む私たち生贄のことを考えての行動だろうし、納得は出来たかな。


 でも……、やっぱり最初に教えてくれてても良かったんじゃないかなって思うところもあるけどね……。


 まあ終わったことだからいいんだけどね。

クーちゃんが助けてくれたし、友達ができたし!



 「 だからクーちゃんがあの場にいたんですね。」


 「 いえ、久遠様は全く無関係です。」



 ????????????



 「 えっ?じ、じゃあクーちゃんが助けてくれなかった場合どうしてたんですか……?」


 「 その場合は危なくなった時点で私が助けに入ってました。」



 待って、ちょっと待って。



 サニィさんって戦えたのっ……!!??



 え?戦える系のメイドさんだったの??


 って言うか、よく見たらサニィさん人族……?

 耳が尖ってない……、丸い……。


 それで、魔族相手に、危なくなったら助けに入ってた……?


 え、待ってサニィさんも強いの……?



 「 ……ありえないという顔をしていますね。」


 「 だって……、サニィさんはメイドさんで……その……人族ですし……。」



 私がそう答えると、サニィさんは1つため息をついて、



 「 シア様、単刀直入に言います。人族が魔族に勝てないという概念は捨ててください。」



 うん、捨てた方がいいのかもしれないというか捨てよう……。


 だって目の前に2人も例外がいるんだもん。



 「 人族でも鍛錬すれば魔族に勝てる可能性もあります。まあ、相当な努力が必要ですが。」



 鍛錬で……?

 じゃあそんなに人族は鍛錬をサボってたってこと……?


 そんなことを考えていると、サニィさんが何かに気づいたように、



 「 この話はまた別の機会にお話致しましょう。久遠様のお迎えも来たようですし。」



 ん?クーちゃんの?


 そう言われて振り向くと、クーちゃんの隣に顔に縫った跡がある1人の男性が立っていた。


 誰だろ?



 「 あ、レイお兄ちゃん!!」



 そう言ってクーちゃんが駆け出す。


 男性は、駆け寄って抱きついてきたクーちゃんの頭にコツンっと拳を振り下ろした。



 「 レイお兄ちゃん、じゃねぇよ!ったく、急に走り出しやがって…。おかげでこっちは町中探し回ったんだぞ……。」



 「 う、ごめんなさい……。」



 怒られてどこかしょんぼりしてるクーちゃん。



 「 分かればいいんだよ。ほら、帰るぞ。」



 男性は、そんなクーちゃんの頭を今度はポンポンっと優しく叩く。



 「 ん!」



 クーちゃんは、さっきのしょんぼりした雰囲気は嘘だったかのように元気に頷いた。


 そんなクーちゃんを見た後、男性はこっちを向いて、



 「 クーが世話になった、サニィさん。……その子は今回の?」



 どうやらサニィさんとも知り合いみたい。



 「 はい、今回の生贄です。」



 サニィさんの言葉を聞き、どこか怒ったような声色でそうか、と呟いたあと、



 「 俺はレイフェス、お前は?」



 名前を聞いてきた。


 クーちゃんの親代わりみたいな人なのかな?

 そんなことを思いながら名前を言おうとした瞬間、



 「 シアお姉ちゃんだよ!!」



 クーちゃんに先に言われてしまった。

 キョトンとしてる私とレイフェスさん、何故かドヤ顔をしているクーちゃん。


 暫くの沈黙の後、レイフェスさんは少し笑いながら、



 「 そっか、シアか。良かったらこれからもクーと仲良くしてやってくれ。それじゃあな。」



 と言って、私達に背を向けた。



 「 バイバーイ!シアお姉ちゃん!サニィお姉ちゃん!!」



 クーちゃんもブンブンと手を大きく振った後に、レイフェスさんについていった。



 「 私達も行きましょうか、シア様。」



 そう言いながらサニィさんも歩き始めた。


 私も行かなきゃ。

 もう置いていかれるのは嫌だもんね!




 今日は色々凄いことが起こったなぁ……

 攫われそうになって、クーちゃんに出会って……。



 正直、ここに来た時怖かった。殺されることは無いって分かっても、上手くやって行けるのかとか、ほんとに大丈夫なのかとか……。


 でも、みんないい人で、同じ人族の人も案外いて、友達も出来て……。



 ここでの生活が少し楽しみになってきた私がいる。


 ほんとに、人生って何が起こるか分からないね。




 心の中でグッと力を入れ直して、私はサニィさんの背に向けて走り出した。



 これからも色々と大変なことは起こるだろうし、いろんな困難に見舞われることになるかもだけど、頑張ろう!!


 今度こそ、幸せに過ごせるように。

更新不定期です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ