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2019.04.08 加筆修正
恋愛シミュレーションゲーム ラヴィアンローズ
物語は、主人公であるアリシア・ローズ(名前変更可能)が、亡くなった母と同じ魔法薬調合師となるべく、王立学園に入学するところから始まる。
くしくも学園は、美貌の第二王子、孤高の天才剣士、膨大な魔力を有する魔術師、隣国の皇太子が同時に入学するという、奇跡の年でもあった。
主人公アリシアは、王立学園で夢と恋、どちらを手に入れるのか……!?
というのが、『ラヴィアンローズ』の大まかな流れ。
前世の私はゲーム好きだけど、恋愛シミュレーション──いわゆる乙女ゲームは好みじゃなかったから、当初『ラヴィアンローズ』の購入は見送ってた。
けどネットのレビューを見てみると、高評価ばかり。気になって詳しく調べてみたら、高評価の理由は開発者がゲーム情報誌の取材で語った“おまけ”だった。
アリシア・ローズは乙女ゲームの主人公らしく、本来の目的である魔法薬調合師をそっちのけにして、攻略対象を攻略するため、奮闘する。
まあ、プレイヤーがそうさせてるんだけど。
でもゲームの中には、ちゃんと調合システムもあるのだ。素材を集めて、レシピを手に入れて、魔法薬を作る調合システムが。
私がこの、普段は決して手を出さない乙女ゲームを購入し、どハマりした原因はまさに、この“おまけ”。
調合システムは作り込まれていて、なおかつやり込み要素も備えていた。
おまけ? ううん、この調合システムだけでゲームが一本、まるまる作れちゃうくらい。
私は素材図鑑を埋めるため、すべてのレシピを手に入れるため、攻略対象の好感度を上げたり下げたり調整して、結果としてみれば、全員のエンディングを見た。イベントスチルも、いつの間にか埋まってた。
けど攻略対象を含めた登場人物については、詳しいとは言えない。
ある程度は把握してるけど、選択肢は攻略サイトを見ながらだったし、ストーリーも開発陣には申し訳ないけど、飛ばし読みすることも。
そんな私でも、わかる。
『ラヴィアンローズ』に、セレスティン・ヴァルトなんて登場人物はいなかった。
主人公でもないし、その主人公であるアリシア・ローズの友人でもない。
悪役令嬢でもないし、そもそも彼女の名前はグレイス・ロザリア。名前が全然違う。
グレイスの取り巻きかと思ったけど、取り巻き二人にもちゃんと名前がある。
ハロルド・ラザラスを攻略しようとすればライバルとなる、ティファニー・ブロッサム。
マリウス・セネットを攻略しようとすればライバルとなる、クレア・キャンベル。
となれば、攻略対象の縁者か関係者なのだけど、それも違う。
セレスティン・ヴァルト──あなたが誰なのか、私にはわからない。
と、思ったけど、これは喜ぶべきことじゃない?
だって主人公じゃないってことは、悪役令嬢の嫌がらせに悩むことはない。
悪役令嬢じゃなければ、破滅エンドを回避するため、策を講じる必要もない。
これって、最高だと思わない?
前世の私がどハマりした乙女ゲームの世界で、私はそのゲームの登場人物とは関係ない、セレスティン・ヴァルトに転生した。
なら、やるべきことはひとつ。
この世界の“おまけ”を、大いに楽しんでやろうじゃない!
親愛なる日記へ
隣国の皇太子レグルス・エストレアの攻略は、二周目から。
悪役令嬢グレイス・ロザリアとの友情エンドは、取り巻き二人の友情エンドを見てからじゃないとダメ。
このゲーム、やたらエンディングが多かった。
(ーー;)