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この物語はフィクションです。実在の人物、団体、事件等とは一切関係ありません。
タイトルは仮です。変わる場合があります。
「セレスティン!!」
足下の小石に躓き、頭から庭の池に突っ込んだ私を、母が呼ぶ。
でも違和感。口に鼻に耳に、容赦なく池の水が入り込んできて、正常な思考を維持できない中でも無視できない、違和感。
「──セレスティン!!」
池の中でもがくこと数十秒、力強い腕によって、私は救出される。
そうして違和感の正体に気づく。
──セレスティン──
池から助け出された私を、誰もがみんな、そう呼ぶ。
でもそれ、私の名前じゃない。
私の名前は小山田 雪。
そう言おうと思ったけど、今は酸素が足りなくて、話すどころじゃない。
「セレスティン! あぁ……わたくしの可愛いセレスティン。お母様がわかる?」
池の水でびしょ濡れの私を、母が構わず抱きしめる。
私は母の綺麗な青色の瞳を見て、なんとか笑おうと努力してみるが、せきこむばかり。
私の名前は小山田 雪。二十歳の大学生で、どこにでもいる普通の平凡な日本人。
それは揺るぎない事実。
だけど同時にわかる。
「……だいじょうぶよ、おかあさま」
私はセレスティン・ヴァルト、八歳。
どういう経緯でこうなったかは不明だけど、どうやら私、異世界転生を果たしたみたい。
親愛なる日記へ
ここに記すすべてのことは、あなたと私、二人だけの秘密。
それを絶対に忘れないで。