葛藤
佐々木 海斗が学校へ行こうと靴を履いていると、
後ろから声をかけてきたのは妹である結芽であった。
「お兄ちゃん、今日は帰ってこない方がいい。
また"アレ"が始まるかもしれないから。」
その言葉で海斗は察した。
佐々木家では、両親の喧嘩による"アレ"が稀に行われる。
サバイバルだ。
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海斗は学校へ向かいつつ、今日はどこに逃げ込もうかと、そればかり考えていた。
「海斗、おはよう!」
振り返ると、小学校からの幼馴染である奥山 慎吾が小走りでこちらに向かって来ていた。
「おはよう」
いつものように挨拶を交わし、歩き進める。
普段から特に会話のない2人だが、
慎吾は海斗の異変に気づいていた。
「何かあったのか?」
唐突に慎吾が言葉を発する。
「いや、今日の夜はどこに逃げようかと思ってさ」
慎吾は佐々木家で稀に行われる "サバイバル" のことは海斗から聞いていた。
「あぁ、アレがまた始まるのか」
苦笑する慎吾に海斗は、
「お前なぁ、こっちは本気で悩んでるんだぞ?」
と苦笑を返す。
「俺の家で良かったしばらく泊めるけど」
「いや、いつも世話になってるから申し訳なくて」
そんな会話を繰り広げる中、2人は学校に到着した。
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ホームルームが始まるまでの時間を、
隣のクラスの慎吾と海斗は普段通り、屋上で過ごす。
「結局、今日はどうするつもりだ?」
慎吾からの問いに海斗は悩んだ。
「今日くらい帰ってもいいかなと思ってるけど、
またどうせ、1ヶ月はかかるだろうし。億劫だな。」
「泊まるとこ探すなら、俺の家はいつでも歓迎だからな」
「あぁ、ありがとう」
チャイムがなるまでの時間を、そんな会話で埋めた。




