おむすびころりん
むかしむかし、あるところに一人のおじいさんがおりました。 木こりとして伐り倒した木々を売ることで日々の糧とし、年老いた妻と慎ましやかに暮らしていました。
その日もおじいさんは、山へ木を伐りに行きました。もうかなりの歳であるおじいさんは、山を登り木を伐るのは一苦労です。 生活がかかっていることとおいたとはいえ長年の木こりの活動で身に付けた頑健な体があるからで伐るのです。
とはいえ、おじいさんが老人であることにかわりありません。 その日は、いつもよりも早めに昼食をとることにしました。かぜがきもちよい山のなだらかな木々がひとつもはえてない斜面に腰掛け、おにぎりをたべることにしました。
しかし、その時運悪くおむすびを包んだござから一個のおむすびが落ちてしまいました。そのままコロコロ、斜面を転がっていきます。 おじいさんは、慌てて追いかけました。
おむすびは、残り二個ほどありますが、大切なおばあさんが作ってくれたものです。 それをこんな形で失うことは、おじいさんには耐えられません。 それゆえの行動でした。
おじいさんは、おむすびが斜面のどこに落ちたのかを追いかけた先で発見しました。それを見た瞬間、おじいさんは追わなければよかったと後悔しました。 おむすびが落ちた先は、一言でいえば穴でした。
地のそこまでも繋がっていそうな、無限の深淵を思わせる穴でした。そして見ているだけで正気を失いそうな禍々しさを放っていました。穴の中から臭いが漂ってきます。その臭いは、堪らなく血生臭いものでした。 ここは、正常な人間にとって甚だしく有害な領域であるとおじいさんは悟りました。
しかし、そんな領域でも幸せをもたらすことがあります。穴の中から声が聞こえてきました。それは、確かに日本語でしたが聞くだけで不愉快にさせるような声でした。
「オオウマイ、ウマイゾ!」
「儂ラモ、シュショクダケデハ、腹ガミタサレン」
「オオ、ソトにいるものがオトシタノカ? ホウビヲイマヤロウ!!」
その声とともに穴のなからから小さな升が投げ出されました。その升のなかには、小さな金の粒が一杯に入っていました。
おじいさんは、慌ててそれをもって駆け出しました。望むべくもない幸運でしたが、この呪われた不浄な場所にいたくなかったのです。
おじいさんは、この時得た金をもとにおばあさんとそれなりに満ち足りた生活を送ることになりました。それを殊更いぶかしんだものがいます。村の誰からも嫌われるけちんぼうで強欲が服を来たというおじいさんです。
村人からおじいさんは、それなりに慕われているので、誰も深く羽振りがよくなった訳を聞き出しませんでした。ただそのがめついおじいさんは、羽振りがよくなったわけを執拗にさぐりました。あわよくば自身も金持ちになろうとしたのです。
ある日の夜のこと、秘密を探るべく庭に忍び込んでいたおじいさんはその秘密を知りました。 おばあさんに優しいおじいさんが、金を得た穴について話したのを盗み聞きしたのです。
その話を聞いた強欲おじいさんは、穴の中のものから金を奪おうと目論みました。ナタをもって一目散におじいさんが話していた穴に強欲おじいさんは、目指していきます。やがて穴が見えてきました。
穴の不気味さに少しためらいましたが、富という欲望に負けおじいさんは穴の中に飛び込みました。
おじいさんは、穴の中に飛び込むないなや絶叫しました。穴の中には、名状しがたい犬のような姿をした二足歩行生物ーーー屍食鬼が救っていたのです。
腐り果てた人肉らしきものをむさぼっています。
「オオ、新鮮ナジンニクガキタゾ!!」
「暖カイケツエキ、ハゲシク脈打つシンゾウ・・・」
「カンゾウもウマイゾ・・・ノウミソもタマラン」
「コノマエノオニギリモヨカッタガ、ヤハリシュショクにはカエラレン!」
強欲おじいさんは、あわれにも八つ裂きにされ、骨のいっぺんに至るまで美味しく屍食鬼に食べられてしまいました。皆さんも強欲には、気を付けましょう。
でなければ・・・・地下鉄で通勤中に屍食鬼にあうかもしれません。