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異世界の終末論  作者: マカベ
第01章 悪魔による異世界への誘い
9/16

♯9


そのベルモンドホームの本拠地というものは、見た目古い銀行みたいな場所だった。というより、金銭関係のギルドが銀行の代わりになっているんだろうか。

今現在は夜で、その建物の前まで三人一緒に来ている。

イオナが言うには、この建物の中には父親が書いた借金関係の調書がある。その調書を探し出して権利関係を母親にではなく未成年者であるイオナに権利を譲渡させる。そうすれば自治の法律によって借金の取り立てがスムーズにできなくなるらしい。

「ベルモンドホームが借金主を変えたくないのは、私が信頼できないからではなく、体の弱い母親に権利を譲渡させ続けることで借金返済を遅らせたいのよ。」

「ベルモンドホーム自体は、借金のせいで困ってはいないってことか」

「別に彼らなら別の方法で金を稼ぐ方法はあるだろうから。それに、私は彼らが嫌い。嫌い過ぎるから、正々堂々と戦わせざるおえない状況にしてみせる」

それだけ自分が借金を返済できる理由があるんだろうか。

ふと疑問に感じては居たものの、仕方が無いことだろう。

「ねぇ。優紀ってバカなの?」

突然、サキュバスに馬鹿にされた。

「自分は不法侵入して借金の調書を奪うのはいいんだー」

「いや、僕はイオナに協力してるだけであってだな・・」

「あっそ。私は協力しないから。後は自分で勝手にやってねー」

そう言って、サキュバスは何処かに行ってしまった。

「イオナ・・一応言っておくけれど、その借金ってどれぐらいあるんだ?」

「十万ほど」

日本円でどれぐらいなんだろうか・・。

あまりよく分からないが、彼女が緊迫としている限りはかなりの量だと思う。

「借金主を母親からイオナに権利を譲渡する契約のために、調書が必要で・・ベルモンドホームがそれを返さないから今こうして直接殴り込みにかかっている。それは絶対なんだな」

「うん。信じてくれるとは思わなかったけれど。君、もしかして女の子に弱い方?」

「いや、女運が悪い方だな。どちらかというと」

「そうだね」

何か引っかかったが、今は建物の中に侵入するしかなかった。

その侵入する光景をサキュバスが無表情でずっと眺めている事に気が付かずに。


イオナの推測した通りの場所に入り、調書を探る。それほど時間がかからないはずだが、自分はそもそもこの世界の文字を読めなかったりするのでイオナにまかせっきりとなった。

「イオナ、そろそろいいか?」

「うん。OK、あったよ」

数枚ほどの書類を手に持ったイオナ。

結果が出たどころで退散するはずだったが、突然明かりが照らされた。電気なのかよくわからないが、この世界にも光を照らす機械があるようだ。

自分とイオナは、いつの間にか複数の黒いフードを被った人間たちに取り囲まれている。

そして、その複数の人間たちとは一人だけ違う恰好をした少女も居た。騎士の恰好をしているところを見ると、彼女がリーダーなのだろうか。

「ここまでですよ。イオナ・ルイーゼ」

ルイーゼは無表情のままだった。

「まさか直接乗り込んでくるなんて、本当に度胸がいい。その人は貴方の新しい仲間ですか?」

「一応逃げる算段は容易してるんだ、私。ねぇ、ユウキって言ってたわね。この人たちの相手はできる?」

何故イオナはゆったりとしているんだろうか、まるで焦りがなかった。

「イオナ、この状況は・・」

「私を本当に信じるなんて、人が好過ぎる人は本当に馬鹿過ぎる」

イオナは右手を大きく振り上げた。何か物を投げたのかと思った瞬間、その投げた物が眩く光る。

強い光で目も開けられずに居たその数秒後、光が無くなるといつの間にかイオナが居なくなっていた。

「逃げ足早っ!?ってうわぁ!!?」

イオナの異常な逃げ足の速さに驚いていると、騎士の女の子が突然剣を抜いて襲い掛かってきた。

それを直前で回避するのだが、どうして丸腰の僕が襲われないといけないのだろうか。

「ちょっとまった!何で僕が襲われなくちゃいけない!」

「何意味不明な事を言っている!!」

「え、えぇと、ベルモンドホームの本拠地で彼女が必要な借金主の調書を勝手に拝借しようとしていただけで・・そもそも銀行のギルドの中ってこんなに警備員とか駐留しているものなのか!?」

とか言いながらも、剣を振り回し続ける少女の攻撃をかわし続けていた。

そこらへんに置いてあった分厚い本で彼女の剣を防ぎつつ、彼女の説得を試みる。

「馬鹿を言え!あいつがいつ借金取りになった!」

「は?」

どうも、僕は騙されていたらしい。

「奴はベルモンドホームの従業員を一人殺害した容疑をかけられている。理由としては明確で、彼女が大金をせしめるために被害者を殺害して銀行券の一部を奪った。彼女は、恐らく別の銀行ギルドの一員だろう」

「マジで・・?」

「ふん・・どうやら彼女にいっぱい食わされたようだな。これ以上抵抗した場合、貴様を公務執行妨害の罪状を一つ加えることになるが・・」

「・・・・」

どうも僕は早々大きな失敗をやらかしてしまったらしい。

女運の悪さが酷いのは昔からだが、どうもこの世界に来てからよりひどくなったようだ。



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