#5
目を開くといつの間にか自分は広い草原の上に寝ていた。
一緒に転移したサキュバスが僕の頭を膝に乗せている体勢になっているが、どうやらさっきの衝撃で気絶していたらしい。
「大丈夫?痛いところない?」
目眩が多少するものの、それ程問題があるわけでわない。
「本当に異世界なんだな」
起き上がり、周囲を見渡す。
「そういえば、僕は一応生き返ったことになるのか?」
「優希の場合は肉体が滅ぶ直前に魂をアストラル体という特別な器に入れ替えたんだよ。アストラル体は魂の情報を元に肉体を3次元上に作り出す投影機みたいなもので、いま優希はアストラル体によって以前の優希と全く同じ姿をしたまま現実に留まっていられるわけでね。」
「はぁ・・。邪神からの神託とか言っていたけれど。君たちは何者なんだ?」
「それを今聞くの?まあいいけれど。私とベリアルは悪魔であり、あの夢の世界で邪神の信仰に従い生きているの。
ベリアルはあの館の主人で、私は彼女のメイドとして働いていたわけだけど。とりあえずあの場所から退散できただけで私は万歳かな。」
「あの場所に何かあるのか?」
「毎日ベリアルにこき使われているだけだよ」
メイド服を着ているのはコスプレ目的ではないようだ。
「これから宝具とやらを見つけるわけだけど、結局どうするんだ?」
「実を言うと、私はこの世界が初めて」
「は?」
「ある程度宝具の場所はわかるけど、地理感はゼロ。闇雲に目的地に直進したら余計迷う」
「邪神さまから何かコメントとかは」
「無い。適当に街に入るしか無いから。あと、お金も現地調達」
「お金は、稼ぐのか」
「アルバイトなんてしたく無い。」
サキュバスは多分、ベリアルに余程何かされたようだ。
「だからまずはカツアゲをカツアゲするんだよ」
「は?」
ていうか、聞いたり驚いたりしてばっかだな。
僕自身本当にこの先大丈夫か心配になってきた。